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網焼亭田楽の創作落語集

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網焼亭田楽師匠による創作噺集です。お題に合わせて作ったものや、お題なく創作されたものなどを集めました。
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記事一覧

ありがたや五平 by 網焼亭田楽

毎度バカバカしいお笑いにお付き合いしていただきとう存じます。 まあ、どこにでも自分のことを運が悪いと嘆く御仁がいるものですが、大抵の場合はご自分がなさって来たことが降りかかっている場合が多いようでございます。 天に向かってツバを吐けば、やがて天からツバが降ってくるというものでして、自分のした行いは必ず自分に戻って来るようでございます。 さて、ここに自分の運の無さを嘆いている男がおりました。 「ああ、どうしておいらはこんなにも運が悪いんだろう。同じことをしても、それがどんど

東京、大阪、名古屋 by 網焼亭田楽

 毎度バカバカしいお笑いでございます。  東京、大阪、名古屋の人の性格を表す話としてこんな話がございます。 3人で食事に行ったお勘定の時に何を考えるのかと言うことなんですが、東京人は格好つけ文化ですから3人分払うといくらになるかと考えます。大阪人は商いの文化ですので、割り勘にしたらいくら払えば良いかと考えます。 名古屋の人はと言うと、お礼の言葉を考えているなんて言われておりまして、まったく次元が違います。あっぱれあっぱれでございます。  また、最近は便利な世の中になってまい

打ち直し by 網焼亭田楽

 毎度バカバカしいお笑いでございます。  最近は、何でもかんでも少し悪くなると交換してしまう世の中になってまいりました。  車だってそうです。ちょっと運転席側のヘッドライトがつかないんなんて言うと、配線やら何やら細かいチェックなど致しません。ヘッドライト丸ごと交換してしまう場合が多いようでございます。  テレビだって、調子が悪くなれば修理というよりも調子の悪い部分を交換、下手すればテレビ丸ごと買い換えてしまうなんて世の中です。 昔はそんなことはなかったようでございます。 「

どいつもこいつも by 網焼亭田楽

 え〜、本日もバカバカしいお笑いにお付き合いいただきたいと存じます。  最近は、何でもかんでもAI頼みでございます。  子どもたちにとって楽しかった夏休みも終わりを告げようとしておりますが、昔はこの時期になると溜まってしまった宿題に頭を悩ませるお子さんも、いや、むしろそんなお子さんをお持ちになられている親御さんも多かったのではないでしょうか。  そんな中でも、夏休みの嫌いな宿題ナンバー1と言えば、読書感想文でございます。  読者自体が嫌いだというお子様もいれば、読書は好きだ

怪談ぼたんどうろ by 網焼亭田楽

世の中にはいろいろと怖いものがございまして、昔から地震、雷、火事、オヤジなんて言葉がありますように、一番怖いのは「自分自身」でございます。その次が神社にいらっしゃる「神なり」、そして奥様方の敵「家事、育児」と続き、最後が「おやじギャグ」でございます。 それはもう、ツボにハマった時のおやじギャグの恐ろしさと言ったら……もちろんドツボにハマった時の恐ろしさでございますが。 なんてバカなことを言ってはいられません。この世には本当に怖いものが存在するのです。 今日はそんな泣く子も黙る

シン・チェリーブロッサム・ビューイング by 網焼亭田楽

 毎度バカバカしいお笑いでございます。  日本人というものは昔から自然を愛でる心というものを持ち合わせておりまして、春になると桜の花を見て、「何と綺麗な花でしょう」なんて言いながら、花を放っておいて飲むわ食うわの大騒ぎでございます。いったい何を愛でてるのかよくわかりませんが、春と言えばとにかく花見でございます。 花見というのは、何も金持ちだけのものではございませんでして、貧乏人にも等しく見ることのできる景色でございます。見るだけなら、もちろんタダでございます。  でも、そこは

長屋の年末 by 網焼亭田楽

 毎度バカバカしいお笑いでございます。  最近の建物は縦にスッと伸びて、やれ新型のタワーマンションだの高層建築だなんてものが立ち並ぶようになってまいりましたが、ひと昔前の集合住宅と言えば団地でございました。  ふた昔前はと申しますと、もちろん長屋でございます。  長屋というのは店賃(たなちん=家賃)が安く設定されておりまして、その安い店賃でさえ毎月毎月きちんと納めている店子(たなこ=借家人)は少なかったようでございます。  そこで、家主としましては、新年を迎えるにあたって、溜

怪談・人面魚 by 網焼亭田楽

毎度バカバカしいお笑いでございます。 最近は何でもかんでも科学というもので判断してしまうような世の中になってまいりまして、特にAIが出て来てからというもの、この人工知能に頼り切りになってしまっているようでございます。 「おい、よたろう」 「何でございましょう、だんな様」 「おまえさん、最近変なものを見たって言うじゃないか」 「ああ、人面魚のことですか」 「何だい、そのジンメンギョって」 「だんな様は見たことないのですか。人の顔をした魚のことなんですけど」 「そんなバカな。ま