『おくのほそ道』を詠む⑨
安積山
等窮が宅を出でて五里ばかり、桧皮の宿を離れて安積山あり。
路より近し。
このあたり沼多し。
かつみ刈るころもやや近うなれば、いづれの草を花かつみとはいふぞと、人々に尋ねはべれども、さらに知る人なし。
沼を尋ね、人に問ひ、かつみかつみと尋ねありきて、日は山の端にかかりぬ。
二本松より右にきれて、黒塚の岩屋一見し、福島に宿る。
信夫の里
あくれば、しのぶもぢ摺の石を尋ねて、忍ぶのさとに行く。
遥山蔭の小里に石なかば土に埋もれてあり。
里の童べの来たりて教えける。
昔はこの山の上にはべりしを、往来の人の麦草をあらして、この石を試みはべるをにくみて、この谷につき落とせば、石の面下ざまにふしたりといふ。
さもあるべきことにや。
早苗とる 手もとや昔 しのぶ摺
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芭蕉は、そこにないものを見ようとしている。
草の戸に雛の家を見たり、青葉の梢に紅葉を見たり、早苗とる手元にしのぶ摺りを見たり、、。
でもそれは、たんなる空想ではなくて、確実にあったことや必然的に起こることを詠んでいる。
珍しく イチョウ並木に 蝉の影
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