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『おくのほそ道』を詠む⑥


雲巌寺

当国雲巌寺のおくに佛頂和尚山居跡あり。


竪横の 五尺にたらぬ 草の庵 むすぶもくやし 雨なかりせば(佛頂和尚)


と、松の炭して岩に書き付けはべりと、いつぞや聞こえたまふ。

その跡みむと雲巌寺に杖をひけば、人々すすんでともにいざなひ、若き人おほく、道のほど打ちさはぎて、おぼえずかの梺にいたる。

山はおくあるけしきにて、谷道はるかに、松杉黒く、苔しただりて、卯月の天今なお寒し。

十景つくる所、橋をわたつて山門に入る。

さて、かの跡はいづくのほどにやと、後ろの山によぢのぼれば、石上の小庵岩窟にむすびかけたり。

妙禅師の死関、法雲法師の石室を見るがごとし。

啄木も 庵はやぶらず 夏木立


と、とりあへぬ一句を柱に残しはべりし。

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芭蕉には、佛頂和尚という師がいた。

その師の影響で、不易流行という信念ができた。

変わるものと変わらぬもの。

永遠性と流行性。

上の俳句でも、夏木立は永遠性を表している。

夏木立は、いつの時代でも夏木立のままとしてある。

不変的な美しさ。

啄木も庵はやぶらずは、人によって違う。

啄木がどう動くかは、詠む人によって違う。

千差万別だ。

このバランスを大事にしたい。

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