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石橋を叩いて叩いて渡るタイプの私が、敢えて準備しようと考えなかったこと

 

 もしもなっちが感染したら私はどうしよう。それ以上に、もしも私(や私たち家族)が感染したらなっちは、そしてこの家はどうなるだろう。

 このコロナ禍、何度か考えようとしかけ答えを導き出そうとしてみるものの、結局突き詰めて考えることをやめてしまい、私たちの生活の中から【その可能性はない】ことにしてきた事柄、それが、

もしも私が新型コロナウイルスに罹ったら

です。


 もちろん、病気なんですからどんなに軽く済んでも重い疾患でも誰だって罹りたくないし、田舎に行けば行くほど罹患したことの社会的影響は大きいです。風評被害どころか村八分だって他人事じゃないですし、感染したことそのものより、『どういう経緯で罹患したか』が大事な要素になる・・・。みんなそれがおかしなことだと頭ではわかっているのに、そこから抜け出せない、それが地方の集落というものです。

 でも、私がこの件を真面目に考えてこなかったのはそういう理由ではありません。


 とっても単純な話です。

 私が(我が家の誰かが)感染したら、なっちは誰のお世話にもなれないという現実を、どう脳みそを引っ掻き回して考えあぐねてもどうすることもできないからです。

 なっちは今、日中は生活介護事業所に通所しており、自宅では一日のうち朝と夕方の数時間を重度訪問介護のヘルパーさんに護られながら過ごしています。夜~朝と土日は家族が対応します。

 【生活介護】とは、常時介護が必要な重度の障害者に対し、社会参加や自立の促進、生活の改善、身体機能の維持向上を目指して、障がい者支援施設や生活介護事業所などにおいて、主に日中の時間帯に利用できるサービスです。(似たサービスで言うならば高齢者のデイサービスのような支援です)

 【重度訪問介護】とは、重度の肢体不自由または知的障害もしくは精神障害で常に介護や見守りが必要な人に、ホームヘルパーが自宅を訪問し、入浴、排せつ、食事などの介護、調理、洗濯、掃除などの家事、生活等に関する相談や助言など、生活全般にわたる援助を行い、また移動時の介護も含めた総合的なサービスを行うものです。まだまだ発展途上の支援の一つで、24時間利用できるようにならないと重度者の在宅生活は難しいですが、これによってALS(筋萎縮性側索硬化症)の方々など重度の障害者が自宅で過ごすことが随分できるようになりました。

 障害福祉サービスのうち、ショートステイや日中一時支援といった入所施設に外来者として間借り的にお世話になるタイプのサービスは軒並みサービスの受け入れを休止してしまいました(そもそもそれも驚きです^^;)が、日ごろから地域でお世話くださっている通所施設やヘルパーなどの訪問サービスは感染防止策を徹底してサービスを続けてくださいましたので、我々の生活は何とか維持されました。

 でもそれは、あくまでも、我々家族も本人も事業所のスタッフさんも非感染者であることが条件です。

 万一なっちが感染したら、私が非感染者でも一緒に入院させてもらって付き添わせてもらうことはできるでしょう。なっちと一緒に病室から一歩も出ないことを条件に。

 ですが、我々家族の誰かが感染したら、我が家は万事休すなのです。

 この場合、なっちは【濃厚接触者】となります。濃厚接触者であるなっちの家にヘルパーさんが来てくださることはおそらく難しいでしょうし、生活介護への通所も絶対無理です。

 家の中に一人で置いておくこともできないし、その際に受け入れて下さる施設ももちろんありません。考えたところで誰もどうにもしれくれはしません。だから『よし、私たちは罹らない、だから大丈夫!』そう考えることで凌いできました。罹ったらいったいどうなるんだろう…と考えることそのものをやめてしまった理由はここにあります。

 フリーアナウンサーの赤江珠緒さんが小さなお子さんを置いては入院できない、入院するからと言って感染すればハイリスクとなる高齢の両親には甘えられない、ということで、結果、入院やホテル隔離が遅れ、重症化して肺炎となり、夫と時間差で入院治療をすることになったのは皆さん覚えておいでだと思います。

 小さなお子さんを核家族で育てているご家庭も、高齢の親御さんを介護されている壮年~老年期の方も、我々のように障害児者の主たる世話人である両親や兄弟も、自分たちが感染者になった場合の手立てがまったくないのが日本社会の現実なのです。

 もちろん、この状況は致し方なしとただ手をこまねいていたわけではありません。お役所や障害福祉を担ってくださっている福祉職種の皆様には当事者家族として発信をし続けました。県や市町村の関係各所の皆様もこのままでいいとは思っておられないと思います。

 この問題を何とかしなければこの冬、障害児者は?高齢被介護者は?核家族の幼い子供たちは?という大きな宿題を抱えたまま第二波第三波に突入するのです、日本という国は。

 一部の地域には、家族が感染者・障害者本人が濃厚接触者となった場合の受け入れ先を整えつつある自治体もあります。利用できそうな公的な施設の一部に介護の必要な濃厚接触者を受け入れて、看護師や医師も派遣するというような手立てを一生懸命考えて下さっている自治体もあると聞いています。でも、現実に私たちの耳に『どこどこで受け入れてくれるから大丈夫だよ、安心してね』という情報は聞こえてきません。

 それがないうちは、いくらGOTOと言われても、経済回せと言われても、私たち障害者の親の巣ごもりは致し方なしだなぁ・・・と思う反面、この半年でこういう問題があるとわかっているのに何の手立てもなく冬を迎えようとする社会ならば、その時になって考えていただいてもいいか、とも思ったり。

 そう、もういい加減投げやりでもあるんです。諦めでもあります。

 なっちを遺して死んだらどうしよう、親亡き後はどうしよう、、、などと考え、親の手がなくても彼女が生きていける方法を、生活支援面・経済面・社会面で石橋を叩いて叩いて叩き割っちゃうんじゃないかっていうくらいいろんな手立てを講じようとする性格の私ですが、ことこのことに関しては、『その時は私は病人だからね~隔離されたらその先のことは知らんがな(^^;』と思ってしまっているのです。

 また感染拡大が起こると言われているこの冬。我が家が無事かどうかは誰にもわかりません・・・。でも、おそらく夫も息子も、誰も、本気でどうにかしようとは考えていません。

 私も、今のところ考える予定はありません(^^;

 正常性バイアスで罹らないと本気で信じています。

 

 

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