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誰かを大切に想うということ 〜この国難にあって、人々にどうメッセージを伝えたらいいのか、という私見〜


 あ〜、憎き新型コロナウイルス。自粛だらけの世の中。

 【自粛】【不要不急】。

 なんとも曖昧な言葉の羅列に、人の顔色ばかりを伺って様々慮ることに疲れた人たち。

 高齢者は重症化しやすいから要注意!でも、若者は罹っても軽症で済む?!

 死亡率は低いけど伝播率は高いの?

 情報は毎日積み重ねられ、何が正しい情報なのかよくわからない。1週間前に言っていた対策は今は非常識になっていたりします。この文章だって数日寝かせていたら『今頃何言ってんの?!』という非常識なコラムになるかもしれない💦

 ただ、2020年3月末現在、新型コロナ対策についての意識格差は、地域性も大きいでしょうし、それ以上に世代間ギャップはとてつもなく大きいように思います。

 今日は、若年層でも高齢層でもない私が、年代ごとの人々や地域性などをここ2ヶ月ほど観察をしてみて感じた私見を、批判を覚悟で、でも心を込めて一生懸命に書いてみたいと思います。

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 新型コロナ。単体ではそれほど恐ろしい病ではないと私は今でも思います。もちろん重症化率や死亡率を侮っているわけではありませんが、特に死亡率が高いとされる高齢者にあっては、風邪でも(骨折でも!)命取りになるのは昔からあまり変わらないのですし。

 でも、このコロナの怖いところは、一人一人が重症化するかどうかという確率論よりは、感染者が束になってやってきたら医療崩壊をきたすところ。そして、一部の重症化される方々の悪化のプロセスが老いも若きもとても早そうだということです。軽い症状の方にどう療養していただくか、トリアージをどうするかは喫緊の課題だろうと思います。

 もちろん、まだ特効薬やワクチンがないとか、一度陰性になってもまた陽転することがあるとか、ほかにも様々怖い点はあるけれど。

 でも、だからこそ、国や地方自治体は、大挙して患者が病院に押し寄せないように活動自粛を要請して、感染者を少しずつ少しずつ治療したい訳です。

 まぁ、そんなわけで老若男女に対し【不要不急の外出自粛要請】となります。日中外で働くことすらできれば自粛してって言ってますから、もはや不要不急じゃないですよね。

 首長さんたちもマスコミも『高齢者が感染したら大変なことになるから、若年層の方々、知らずに高齢者にうつす可能性を減らしたいので頼むから自粛してね』ってことを言っているように聞こえますよね?!でもそれ、少し違っています。世界中には、若い人の中にも重篤化して死亡しないまでもとても辛い思いをしている人が大勢いるんです。

 そして、先週から各都道府県の首長の【自粛要請】が次々出されて、街は混乱をきたしています。

 これがまた、どの自治体首長の会見でも非常に曖昧です。日本人はもともと思いを詳らかに言語で表出するのではなく相手の気持ちを察する文化で、かつ非常に真面目な国民性なので、その曖昧な中でも倫理観や道徳に照らして、【こうすれば自粛かな?】って考えて行動しようとします。

 ところが、そもそも【自粛】という曖昧さがある上に、【不要不急】なんて更に曖昧に言われてしまうと、もう何が正解で何が不正解なのか分からなくなってしまいます。

 そもそも【不要不急】なんて世代によっても違うでしょうし、我々のように家族に障害者のいる生活、高齢者を介護している人の生活、老老世帯、若年夫婦、子育て世代のそれぞれの生活で、本当に様々な捉え方があるんです。《これが常識だ》なんて簡単に言わないでいただきたいのです。

 都会や田舎といった地域性にももちろんよりますし、同じ日本でももはや文化も違うし、世代により購買行動ひとつとってもネットや宅配など人それぞれ全然違うんです。

 だから、そろそろ初老の域にいらっしゃる多くの首長の方々、政府の方々、日本という一つの国の国民、都道府県民、市町村民だけれども、いろいろな思いのいろいろな立場の人がいるのだということにもっともっと配慮して思いを馳せて、出来るだけどの年代の人たちにも通じる言葉で【大切な皆さんへ】の会見をなさった方がいいように思うんです、私。

 そこに思いが馳せられないと、若年層が自身の判断で『これくらいなら大丈夫かな?』って判断して出かけちゃいます。これはこれで急降下の経済に対し感染のリスクを冒してまで頑張って経済活動をしているわけで、必ずしも間違った行動だと思っていませんよ、彼らは。その結果感染者が増加していると若者ばかり責められても気の毒な気がします。

 お年を召した方々がよくお使いになる台詞『今時の若いモンは』ってのを今ここで繰り出してもおそらく若年層にはまったく届かないと思うんです。

 彼ら若年層は、少子高齢化が進んできてから成人になった人たちです。彼らが大人になった時、巷ではすでに自分たち若年層ではなく高齢者に優しい街作り仕組み作りが次々となされ始めていましたし、高齢者に席を譲るという既存の倫理感のあまり自身が妊娠しても内部障害や怪我でつらい時にも席を譲ってもらえなかったり、ベビーカーを電車に乗せるか否かの論争で心を痛めたり、到底運転能力などなくなっている超高齢者や認知症高齢者の無謀な運転に驚愕したり、待機児童問題で就職を諦めたり、果ては、今の高齢者が現役だった頃の給料やボーナスは望めないし、彼らほどの年金は絶対もらえない、と誰でも知っている、そんな世代なんです。

 道徳や倫理に単純に照らしたところで、社会が自分たちを守ってくれる気なんてしていない世代です。

 それに、家族構成や地域のあり方の違いもあります。一概には言えませんが都会よりも田舎の町や村には、自分の親や祖父母だけでなく近所の多くのじぃじやばぁばに見守られて育った子どもたちがいます。その子たちは、【自分勝手な自粛】や【自己中心的な不要不急の解釈】が、近所のじぃじ、ばぁばに影響を及ぼすことをちゃんとイメージできています。その子たちと、高齢者との関わりが希薄に育った子どもたちとでも、また少し違います。

 近いうちに私も高齢者側に行く人間なので嫌な言葉ですが、『老害』なんて言葉にもはや注釈が要らないということは、若年層が高齢層の振る舞いの多くをそう捉えていて、だからといって『何を言ったって自分たち少人数の若年層の意見はまともに取り合ってもらえないし』と諦めてSNSでだけ懸命に叫んでいる哀しいさまが見て取れます。政治的にも、これだけ不満に思いながら、今の政府を本気で糾弾しようとしない若年層の諦めは本当に深刻だと思います。

 もちろん、単純に若い世代の方々の肩を持つわけではありません。彼らだって自身の生活にきちんと目を向けてもらうために議員や首長を選ぶ選挙にちゃんと行かない(行く人が少ない)という大きな過ちを犯しています。ですが、もう一つ踏み込んで言えば、その選挙、若者が皆で頑張って行ったとして若年層の数は高齢層に比して少数派となります。日本とはそういう国なのです。だから、なかなか国や地方自治体に若者の声が届きにくいのは、もはや日本の人口割合上必然なのかもしれません。

 自分たちの立場を慮ってもらう経験が乏しかった彼らは、いつの間にか、『言ったってしょうがない』『何か変わるわけじゃないし』と冷ややかな目で社会を見るようになったのではないでしょうか。

 今の世の中が素晴らしいものだなんて全然思ってないけど、とんでもなく悪いわけでもない。これ以上若年層が何か言ったところでどうせ何も変わらないさ、という諦め。

 と、同時に、社会は自分たちの世代には冷たいから自分や家族を守るのは自分、その結果、自分たちが良ければ良いのだという個人主義に傾いた世代でもあるかもしれません。それは、いいこととは思えないけれども、彼ら世代の自衛の策であり、哀しいけど彼ら世代を我が事のように大切にしてこなかった社会の問題でもあるのではないでしょうか。机上でだけ倫理道徳を教えたって育つ物じゃないってことです。

 その彼らに、今まさに国民一丸となって何かを為し得ていく必要性を、本人たちの倫理観や道徳意識に期待して説けるとは私には思えません。これまで彼らを大切に扱わなかったのに、いけしゃあしゃあと今頃何をか言わんや?という気さえします。

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 大切にされて初めて人は人を大切にする喜びを学ぶのです。思考じゃなくて感情です。

 小さい頃から『あなたはとっても大切だよ』というメッセージを社会に送られ続け、その子が大きくなって誰かの役に立つことができ、その相手に笑顔を見せてもらえたことで得られる喜び。自分が受ける有難さよりも人が喜んでくれている姿が嬉しいという喜び。身をもって体験した人しか得られない喜びです。そして、それらは隣人へ広がりを持って連鎖していくんじゃないでしょうか。

 愛された人しか他者を愛せるようにならないのではないでしょうか。

 今、【自分たちなりの自粛】しかしていない人たちはただ責められるべき存在でしょうか?感染爆発しそうなこの時期に、彼らの行動に対しただ責めているだけでいい訳ないですよね。もっと本気でメッセージを送らないと!

 この国難を本当になんとかしたいなら、曖昧な言い方はできるだけやめて、どの世代にも共通言語である言葉を使い、具体性をもって呼びかけるしかないんじゃないかな、と思います。だいたい、この緊急事態において使っている言語もとっても不親切。オーバーシュートってなんですか?ロックダウンって何?この言葉を聞き慣れ使い慣れていた人が一体どこにいるのでしょう?

 そして。

 その発するメッセージの中には、『決して高齢者のためだけじゃありません。重篤化する数%の中には若年層の人も必ずいるんです。誰もが辛い思いをしないためにみんなで乗り越えましょう!』と若年層自身のことを大切に想うメッセージもしっかり付け加えて。


 

笑顔が増えるための活動をしています。 いただいたサポートは、稀少疾患であるアンジェルマン症候群の啓蒙活動、赤ちゃんから高齢者まで住み慣れた地域で1人でも多くの方が笑顔になるための地域活動の資金として大切に使わせていただきます(^^)