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DREAM SALVAGE

落とした石鹸を海の底まで拾いに行ってくれた。相棒にシュノーケルの先端を手渡して、暗い雨の夜、濁った地面にヌルリと身体を潜らせた。

細いシュノーケルの管を左手で振り回して、暇そうにしている。私はその管が手からポトリと落ちてしまうのではないかとハラハラしている。
真っ暗な足元よりも更に深い場所で何も見えずに迷子にしてしまうのではないだろうか。石鹸が落ちた場所までまっすぐ向かえただろうか。

余所見をして肩の高さにあった水面に管を潜らせてしまった。底がどうなっているかわからなく心配したが、この人は笑って気にせずにいた。

程なくして石鹸は戻ってきた。私が落とした石鹸は両手の平に収まるほどの丸くて白い石鹸だった。
水に濡れてまた滑り落ちそうになる。感謝を伝えて、やさしく手で包み、三人で建物へ戻った。

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