「1滴の血液から13種類のがんを検出」!?これはいいのか?

 東芝が1滴の血液から13種類のがんいずれかの有無を99%の精度で検出できる技術を開発し、2020年から実証試験を始めると発表した。多くの人はこれで「へーすごいな」で終わるのだと思う。ちょっと興味を持ったので、この情報について、もう少し、詳しく調べてみる。というわけで、まず、東芝による発表↓

 まとめると、まず、前提としては、

1. がんになると、約2,500種類あるマイクロRNAのうち、何種類かのマイクロRNAが血液中で上昇する(これはもうすでに知られている事実みたいです)。マイクロRNAとは、数十塩基程度の短いRNA。

2. 今まではマイクロRNAの検出には手間がかかる(一般的には血液中から、短いRNAを含むRNAを精製して、リアルタイムPCRによって定量する)。

3. そのため、がんだと確実に上昇するということがわかっているマイクロRNAを安価に検出できれば、がんの早期診断に使える。

 という流れです。ですので、今回、このニュースの価値としては、どのがんでどのマイクロRNAが上昇するか選別したということと、マイクロRNAを検出できる技術を開発して、融合したということにあるわけです。

 もう少し、突っ込んで記事を読むと、マイクロRNAに人工配列を付加して、マイクロRNAチップで定量検出するとあります。このフローに計120分かかるとあります。印象としては、コストはかかりそうという気がします。マイクロRNAチップと検査装置のコストがどこまで下げられるかというところが勝負なような。

 たとえば、DNAチップを使った消化器系がんの検査(マイクロアレイ血液検査)がすでに実用化され、料金が10万円くらいみたいなので、それくらいに落ち着きそう。

 あとは、マイクロRNA検出によるがん診断がどのくらいの信頼性があるか?というところ。東芝が発表している図を見る限りはかなりよさそう。ためしに、論文を調べてみたら、膵臓がんでのマイクロRNAというレビューがあって、膵臓がんひとつとっても、数種類のマイクロRNAが報告されています。一応リンクを貼っておきます(英語です)。

https://www.nature.com/articles/jhg201659

 現在発表されている資料からは、どのマイクロRNAを調べてがんの検査に用いているかはわかりません。おそらく、かなり多く、場合によってはすべてのマイクロRNAを網羅的に調べているのでは?とも思います。だとすると、コストを下げるのは難しそうです。

僕の結論としては、「コストはかかるけど、よさそう」です。


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