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残響散歌

大学の研究室を決める際に、法医学教室を選ばざるをえなくなってしまった。

法医学とは簡単に言うと死体を観察する学問。

人の命を救いたいという志を持って医学部に入学してきた人にとって、法医学程無駄なものはない。実際に現場で役に立つ事といったら、死亡診断書を書く時だけだろう。

そんな学問を研究しようとする人なんていないのだ。

僕の第一志望は循環器の研究室だった。ただ、定員オーバーのため抽選にハズレて法医学送りになってしまった。抽選にハズレた他の人も公衆衛生や寄生虫等の地味な研究室に配属されテンションは下がりまくっていた。

僕は選ばれなかったのだ。




それは4回生の春だった。

ちょっと前に知り合った岡山に住む私立医学部生のEくんから、久しぶりに遊ばないか?というメールが来た。春休みは暇だったし、また彼とヤりたかった僕は二つ返事で岡山に向かった。

それに、第一志望でも第二志望でも、まして第三志望でもない研究室でつまらない勉強をするのに打ちひしがれていたので気分転換もしたかった。

今回は前回みたいに乗り継ぎではなく新幹線で岡山まで行った。


最寄りの中庄駅まで迎えに来てくれたEくんはカッコイイ、そして乗ってるBMWの車体がキラキラ輝いていて眩しかった。そして、その助手席にいる謎の男もキラキラ…輝いていた?

その助手席の男はKくんといい、Eくんのゲイ友達だった。Kくんは中性的な感じで、なにわ男子にいそうなタイプの美少年系だった。

Eくん「友達が3Pしたいっていうから呼んだんだー」

と車に乗ってからKくんを紹介された。まさか、まさか3Pをする事になるなんて…僕は…僕は…その場で勃起してしまった。


Eくんの家に着くと、すぐ3人でシャワーを浴びた。3人とも若すぎる故か、服を脱いだら全員フル勃起だった。

若さって恐ろしいもんだと思う。ついさっき会った男と3Pをする事に微塵の恐怖も抱くことなく、期待に胸を躍らす事ができるなんて…。

14時くらいにEくんの家に着いたのだが、SEXが終わったのは夜の19時くらいだった。約5時間もSEXをしていたなんて…5時間なんてちょっとしたバイトができる時間だ。

もし、5時間持久走をやれと言われたら絶対にできないと思うけど…SEXとなると休憩をはさみつつも、こんな長時間できるなんて。人間の欲はすごい。


そんなこんなで、その日はEくんの家に泊ったのだが…約束では、夜は勉強会をしようという事になっていた。しかし…Kくんが帰る素振りはなく、そればかりかKくんも勉強道具を出し始めた。

Eくん「Kくんは某国立大学の医学部だよ!」

あー。えー、医学部のゲイが3人集まってるんだ…


しかし、そこは年も近く境遇も同じ3人。勉強しながらすぐに打ち解ける事ができた。そんなEくんとそのお友達に、僕は最近の悩みである研究室の配属が法医だった事を相談してしまった。

彼らもきっと法医学なんて楽しくない授業を受けて鬱憤を溜めているはず。一緒に愚痴りたかったのだが…反応はそうでもなかった。彼らの大学の法医学の授業はとても面白いらしい。教授がとても面白い人で、授業の内容もコミカルで聞きやすいと…むしろ病理の方がもっと嫌だと嫌悪していた。

Eくんは僕にこの教授知ってる?と見せてくれた本は医学書院の標準シリーズ。その背表紙にその先生の名前はあった。

実名は出さないが、I先生というその先生はKくんのいる国立大学に所属していて、Eくんの大学には法医学の授業のみしに来るらしい。

そのI先生のおかげで、彼らは法医の授業は嫌いじゃないとの事…すごく気になる。どんな先生なのか、どんな授業をするのか…とっても気になる。コミカルに法医学?すんごい気になる…


次の日の朝も朝ごはんを食べながら僕はI先生の事を聞いてしまった。

さらに、午前中に3Pしている最中もどんな授業なのか聞いてしまった。

お昼ご飯を食べてる時にも…


Kくん「そんなに興味があるなら会わせてあげようか?」

それは、Kくんが言ってくれた。なんとKくんがI先生に研究室訪問って事で連れて行っていいか聞いてくれるというのだ。

僕はその日にKくんと連絡先を交換して、午後はまた3Pをしてから京都に帰った。


それから、2週間後だった。意外に早くKくんから連絡があり、I先生の研究室に一緒に行ける事になった。

その日は土曜日だったが、朝から新幹線で岡山を目指し大学に辿りついた。僕の大学と違って、意外にこじんまりした大学だった。そこは医学部キャンパスのみで存在しており、街の中心部にあった。


土曜日の午前中という事もあり、大学には人もそんなにいなかった。校門の所でKくんと待ち合わせをしていた。Kくんは大学のジャージを着て時間通りにやってきた。

訪問の時間まで少しあるから、一緒に学食でごはんを食べる事になっていた。ここの学食もこじんまりしていたが、なかなかレトロで味も美味しかったのを覚えている。

ごはんも食べて、少し歩こう!という事になりKくんと一緒に学内を散歩した。研究棟も見せてくれたが…校舎は若干古く、ちょっと怖い雰囲気があった。街の中心部にあり、周りをビルに囲まれているためか日差しが届かない部分は昼でも独特の雰囲気があった。

Kくん「ここの廊下って、深夜になると女の人が立ってるんだって…」

嘘か本当か…Kくんが脅してくる。あまり怖い話が得意じゃない僕はKくんに寄り添った。すると、Kくんも僕に寄り添って…自分の固くなった股間を押し付けてきた。

Kくん「トイレ…行こう?」


いやいや…僕はそんな事をするためにココに来たんじゃ…

来たんじゃないのに、なぜか僕はトイレでKくんとしゃぶり合いをしてしまった。

若さって本当に怖い…


大盛り上がりの最中、訪問時間10分前だという事に気付きKくんに、そろそろ行こうと促す。

Kくん「30分くらい遅れても大丈夫だよ!」

いやいや…これだけはあかんやろ。

という事でKくんとの情事を一時中断。Kくんは少しくらいなら大丈夫なのにーと拗ねるが仕方ない。というか、僕が何をしに来たか覚えているのか…。


そんなこんなで、時間ちょうどにI先生の研究室に入る。


ここでの出来事は僕の人生を左右するものになった。I先生の話はとても面白く、そして法医学の必要性を説いてくれた。自分の価値観が一気に変わり、この研究分野で生きていこうと誓った。

時間にして3時間くらいだった。それでも、僕にはとても刺激的で、それはそれは濃厚な3時間だった。そして、僕はI先生を師と仰ぎ、いつかこの人の元で研究ができたらと思ったのだった。

僕は法医学を自分で選んだのだ。


そんな濃密な時間を過ごしている横でKくんはつまらなそうにしていた。彼にはI先生の話は特に響かなかったみたいだ。

そして、研究室を後にするや否やトイレに行こうと誘ってきた…。

KくんにはI先生に巡り合わせてくれた恩があるから、僕は仕方なく…トイレに行くのだった。



それにしても、あの時、僕が性欲に任せて岡山まで来なかったら…この二人には出会えてなかったかもしれない。掲示板と性欲に少しだけ感謝する。

そして、この二人は僕が6回生の時にも現れて、また僕の人生を変えてくれるのだった。






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