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UPLINK Cloud応援 映画log 2作目「ストリベリーショートケイクス」

魚喃キリコ原作の『strawberry shortcakes』を、『三月のライオン』の矢崎仁が映画化!恋に恋する少女、一途な想いを持ちながらデリヘルに身を費やす女、プライドの高いイラストレーター、愛されたい事務OL。この4人の女性の心をリアルに描いた恋愛映画!若手実力派女優と呼び声の高い池脇千鶴、衝撃的なベッドシーンが話題になった中越典子ほか出演。R-15作品。「Oricon」データベースより

文学的な瞬間とビジネスの役割 text by フダ

 仕事に対するプライド、メンヘラ的な恋愛、虚しい毎日とスピリチュアル、強烈な片思いという4者4様に生きづらさを抱える女性が、それぞれの出来事で自分の人生を少し肯定できるようになる物語。
 自然な流れで違和感なく見れるんだけど、起承転結の転のパートの出来事が知りあいの死、宅飲みでのワンナイト、たまたま同居人の過食嘔吐の現場を発見するという偶然のコミュニケーションってところが考えさせられる。

 1つ目。強烈なバイアスを一変させる出来事が死や身近な人とのコミュニケーションなのだとしたら、ウェルビーイングを掲げるビジネスには何ができるのか。ビジネスで文学的な瞬間は作れるのかって問いにもなる。
 その上で2つ目。この4人の主人公は果たして幸せになるのか。物語上の瞬間風速では4人とも幸せになっているけど、1人は私生児のシングルマザー、1人は休職するように見える。長い人生の中で、それは幸福度向上につながるのか。文学的な瞬間は誰にでも訪れて、それは確実に幸不幸をもたらす中で、ウェルビーイングなビジネスの存在意義は、人生を賭さなくても自らを変化させられるサービスやプロダクトというような、そのあたりにあるのかもしれない。多分社会に必要で、でもあまりにも現実的で香りも触感もない回答になるけれど。

私も不器用ですから text by タケヤマ

 私は群像劇や、こうした葛藤を抱えて前向きに進んでいくというような話が好きだ。それぞれに不器用な部分を抱えた2×2の主人公は対立しながらもお互いの不器用さを認めあい、最後のカタルシスに向かっていく。

 ただ正直、この手の映画の感想は非常に書きづらい。「みんな違ってみんないい」ではそれだけで終わってしまうし、かといって映画撮影のテクニックや演技について論議するのも何かしっくりこないからだ。

 「真摯にまっすぐ生きていくことが大事なんだなと改めて思った」という感想は書きたくない。当たり前すぎて何か噓が含まれている気がするからだ。

 同居人を見下しながらも弱音を吐けずゲロする塔子も、パートナーに認められなくても怒ることすらできないちひろも、それぞれみんな本音を言えず苦しんでいる。デリヘルの仲間が里子の店のラーメンを食べて「まずい」と言ったのが清々しく思えるくらいだ。
 誰しも自分なりに真摯にまっすぐ生きている。だからこそ、ここを変えたら人生もっと上手く行くのにといった、無責任な処方箋をもらいたいわけではないだろう。

 描かれているのは、不器用でも真摯に生きてきた足跡とどう向き合うか、そこでふっと訪れ身体に落とし込まれる直感に従った瞬間だと思う。
  今まで生きて来た自分を、今そこにある存在として認めること、そのスタートラインが同時にゴールラインにもなり得るのではないか。

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