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演技の訓練って、何をしたらいいの?

東京で演技コーチをしている秋江智文(あきえともふみ)と言います。この記事はこれから演技を始めたい方、始めたばかりの方のために書いています。

誰でもできそうなお芝居

 お芝居は一見誰でもできそうな芸術です。例えば、ダンスや歌など他の身体表現と比べてみると、どうでしょうか。「白鳥の湖の黒鳥を踊れ」「日舞の鷺娘を踊れ」「魔笛の女王のアリアを歌え」といきなり言われても難しいですが、お芝居の場合、ハムレットはとりあえずセリフを話して、日常的な動作をしていればどうにかこうにかできてしまいます。

 けれど上手い役者と下手な役者との間には、れっきとした差があります。別にダンサーのように「くるくる何回転もする」とか、「高音がでる」とか、目で見える明確な技術があるわけでもありません。
 滑舌が悪い役者、身体が固い役者、太った役者、やせた役者など、身体的な特徴を持っている人が味となって輝くこともあれば、逆にイケメンで、滑舌がよく、ムキムキの見た目が良いとされる俳優が、恐ろしくつまらない演技をすることもあります。純粋な身体能力が必ずしも演技力につながるというわけではないのです。(かといって身体能力がいらないとは決して言いませんが。)

 腕立てや腹筋をやる由は、殺陣やダンスなどをするためだったり、筋肉質でスポーティーな役を振られたりするからです。滑舌や発声を特訓するのは、劇場の大きさに対応したり、明瞭に話をする役柄に対応するためです。基礎的な身体を使えるということは表現の幅が広がります。できないことをできるようにするのは時間がかかりますが、できることをできないふりをする方が簡単と言えます。
 でも、こうして身体の能力を上げることは演技を上達させるためではありません。では舞台や映像で良い演技をするためにはなにをするべきなのでしょうか?

観客は俳優の何を見るのか?

 それを考えるために、観客が一人の俳優の何を見て感動するのかを考える必要があります。観客が見るものは俳優の身体です。観客は俳優の身体の表情やしぐさを通して、ストーリーや関係性を受け取り感動をするわけです。

役者が伝えるもの


 それでは、観客から見えないが、役者が伝えようとするものは何でしょうか?その見えないものの代表は感情です。ただ立っている役者が「怒っている」と言っても、観客には感情は見て取れません。お客に目に映る表情やしぐさに怒りが表れることで感情を感じ取ることができるのです。
 役者は見えないものを観客に伝えるのです。感情を目に見える姿勢や声に変化させて伝えるわけです。

 目に見えないものには、感情の他に、役のイメージ、他の役との関係性、頭に浮かぶイメージ、ストーリーなどがあります。俳優はこれらを身体化させることが必要なのです。

役者が磨いていくもの

 それではここが重要なポイントです!!

 その二つをつなぐものは何でしょうか?役者がどうやって見えないものを目に見える形へとしているのでしょうか?例えばつなぐものには想像力があります。見えない感情は、想像力によって掻き立てられます。悲しく泣く(感情)シーンで、俳優は想像力を使います。自分の困難な生い立ちや、久しく会えなかったこと、両親が亡くなったことを想像し悲しい感情を湧きたたせて泣く演技します。この見えるものと見えないものとを、つなぐものこそが役者の使える手段なのです。なぜならそれはコントロールできるからです。
 そして俳優が鍛えるべきものはこの見えるものと見えないものをつなぐ力です。目には見えない感情やイメージを目に見える身体・表情につながえるために、俳優はその二つをつなぐ力を磨くのです。
 では具体的に何をすればいいのかは、今度お伝えします!


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