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『実在と架空の探索』参加者レポート(12)

レポート作成者:山川恭平

ドラマチック界隈、#1~4まで全て参加。
ここのワークショップが特徴的なのは、ファシリテーターの方たちが参加者の特性を拾おうとする姿勢が強いこと。ファシリテーターの立場が強くなりすぎないようにというのはドラマチック界隈のコンセプト的に基本となる配慮かも知れないが、選ばれるファシリテーターは単純に優しい性格の人が多い気がします。

竜史さんがここはガチガチのワークショップではないんで、と言っていたのが印象に残っています。ドラマチック界隈は毎回持って帰るものも多くかなり有意義だが、確かにガチガチという印象はありません。
ガチガチのワークショップ…参加者の意識がめっちゃ高く全員が爪痕を残そうと鼻息が荒い感じでしょうか。もしくは、主催者が妙に威圧的で緊張感が高い割には何をすべきかが不明瞭で良し悪しの判断がその場を支配している人の好みでしかないじゃん、という場合。前者は良いけど後者は最悪ですね。

ドラマチック界隈の場合は、変に狙い過ぎなくても、こんな感じはどうだろう?とちょっとしたアイデアでも参加者みんなで興味深くみて、それもアリだね、と楽しむ感じ。
シンプルに演劇を通して自己肯定感を上げれるのが良い。

さて、今回のファシリテーターはゆうめいの池田さん。
東京芸大の彫刻家出身、というのは知らなかったので、美大出身の自分は勝手にシンパシーを感じました。池田さんのスタンスとして、自分から発信したいものを乗せる創作は彫刻で、集団創作になる演劇の場合はなるべく参加してる人達の意見を聞きまくる、ということでした。特にゆうめいでは先に役者に脚本を読んでもらって、直した方が良いところなどを聞いていて、その作業をダメ出しと呼んでいる、という話が印象的でした。
自分も役者をやりつつ絵を描いたりもしているので、個人創作と集団創作のスタンスの違いは凄く共感しました。

ワークショップは最初は部屋を色んな速度で歩き回ってから、「いいだしニョッキ」というゲームをしました。たけのこニョッキの変化版で、「会議中に煮詰まって気まずい空気が流れる中、何かを言い出そうとするけどやめる」という行為をニョッキのように被らずに全員やれるか、というゲーム。全員がお互いに行為をやってるのを認識できるか、というのがこのゲームのミソでした。ニョッキだけど下手すると被ってることにも気づけない、集中力を使うゲームでした。

次にやったのはスタジオ内を参加者全員で探索して、各自が興味を惹かれた箇所を発表するというもの。今回の池田さんのワークショップは個人の感覚を広げたり深掘りすることがテーマでした。同じスタジオの中でも、それぞれ人によって見るところは違って、そして何故そこが気になるのか、という背景を聞くのが面白かった。
また、自分が大学生になって一番最初にやった授業を思い出しました。目隠しをして裸足の状態で校内を歩き回り、どこに何があるのか、触った時の感触は、そしてそれを知った時に自分は何をどう思うのか、ということをやりました。普段何気なく見てるものに対する新しい発見と、また自分がどういう風に世界を捉えているのか自分自身に対する新しい発見。創作において、新鮮な視点とプリミティブな感覚が重要、ということを伝える授業だったと認識してますが、それに通じるものを感じました。

その後は、テキストを使ったワーク。
まずはト書きのない台詞だけの台本が渡され、池田さんからの説明は特にないまま役者が自由に解釈をして表現するというもの。池田さんの集団創作におけるスタンスからして、作家の想定の埒外まで飛んでいく発想を面白がっている印象でした。
その点で言うと、自分は「国境を越える」という台本の中のワードに引っ張られて、国境超えをしようとしている設定にしてしまったのは少し安易だったな、と反省しました。国境越えの手段が巨大な謎の生き物である、というところに個性を見出そうとしていたのも、共有し辛いアイデアだったかも…と思ったり。
集団創作における一つの理想は、互いが自由にアイデアを出せる状況にあり、なおかつお互いのアイデアが絡み合って一人では辿り着けない領域にいくことにあると思いますが、自由の中にも共有できる箇所をいかに見出していくかが大事だなと思いました。

その後、ト書きのあるテキストが渡され、池田さんがサーフィンに挑戦した時の体験を元にした台本であることが判明するのですが、やはり、その事実より飛んだ発想である方が面白い、というか集団創作をやる甲斐があるかな、と思いました。とはいえ、あくまで個人の感覚が出発点なので、発想勝負に囚われてしまうとそれはそれで違うとも思いますが。

テキストのワークは基本的には参加者が2人1組で発表するのですが、その作品によっては部屋の照明を消したりiPhoneのライトで照らしたり音楽をその場で流したり、池田さんがチームの作品に合わせてやってくれる姿も印象的でした。

台本、演出、役者。
それぞれのパワーバランス。
これが絶対に正しい、というものが無いのが集団創作の難しいところであり楽しいところだなあと思います。

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