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小芝風花さんはドラマにおける司令塔である

漫画が原作のドラマ『美食探偵 明智五郎』(日本テレビ)。主人公はもちろん明智五郎だが、このドラマは明智五郎をはじめ数多くの登場人物と絡み、コミカルからシリアスまで幅広いシーンに登場し、ドラマの流れを作り出していた小林苺の物語と言っても過言ではない。

「1.5倍速に感じるくらい、情報量が多いドラマにしたい」

そう考えたプロデューサーが、早口でも滑舌が良く、明智五郎役の中村倫也さんとテンポの良いかけ合いができる若手女優を探した結果、『トクサツガガガ』(NHK)の演技を観て小芝風花さんにオファーしたという。演技力の高さが知られていたものの、ストレートに感情を表現する苺というキャラクターには当初騒々しいといった視聴者の反応もあった。だが、回を重ね明智への恋心が募った感情表現が現れるようになると徐々に否定的な意見は少なくなっていった。

そして、このドラマで小芝風花さんの確かな演技力の評価が決定的になったのは第6話のラストシーン。第5話で明智に「君のことも僕が守る」と言われ恋心に火が点いた苺が、明智に想いを吐露する大切なシーンだったが、コロナ禍で放送日までに通常のドラマのスタイルでの撮影は叶う見込みがなくなり、黒幕バックで密を避けるため中村倫也さんと小芝風花さんの距離がとられた“通常とは異なる方法”で撮影された。それによって明智と苺の心の距離が表現され、苺の切ない心情がより一層感じられる印象深いシーンになったが、役者さんの演技力に左右される難しいシーンでもあった。このシーンをテストなしの一発本番で撮影できたのは、苺を演じたのが小芝風花さんだったからに他ならない。

サッカーなどのスポーツで試合の流れをコントロールする役割を果たすチームの中心選手のことを司令塔と呼ぶ。同様に、ドラマの流れをコントロールする役割を果たすキャストの中心人物も司令塔と呼べるだろう。最初に司令塔の片鱗を見せたドラマが2017年の「マッサージ探偵ジョー」(テレビ東京)。それまで真面目な役が多かった小芝風花さん初のコメディ作品で、このドラマのインタビューで出演者の一人である小澤征悦さんが「全ては小芝さんがコントロールしていた」「総監督みたいなもの」と語っていた。

そんな小芝風花さんの民放連続ドラマ初主演となる『妖怪シェアハウス』(テレビ朝日)がいよいよ2020年8月1日(土)から始まる。このドラマにはお岩さん、酒呑童子、座敷童子、ぬらりひょんなど伝説の妖怪たちが続々と登場する。着々と司令塔としての腕を上げている小芝風花さんにとって不足はない。コメディエンヌの次世代ホープがどのようにホラーコメディーという新たなドラマをコントロールしていくか。週末が待ち遠しくなる夏がもうすぐやってくる。

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