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小芝風花さんは新しい世界へ踏み出す勇気を与えてくれる女優さんである

『モコミ ~彼女ちょっとヘンだけど~』を振り返る

2021年4月3日に最終話が放送された『モコミ ~彼女ちょっとヘンだけど~』。感情を持たないとされているモノの気持ちがわかってしまう繊細な“感覚”の持ち主である萌子美を演じた小芝風花さんは、引きこもりの生活が長かったことを思わせる少女のような印象の女性を描き出すと共に、本当にモノの気持ちがわかっているのではと思うほどフィクションの世界がリアルに感じられる演技を見せてくれた。難しい役をあくまでも自然体で演じるのは確かな演技力があってこそだが、その高さゆえ普通に見えてしまい演技の凄さがどこまで伝わっているだろうかともどかしさを覚えるほどだった。

この作品は「萌子美の成長と彼女を見守る家族の絆と再生を描く物語」であり、小芝風花さん演じる萌子美が成長する姿を中心にしたホームドラマとして見ていたが、最終話で感じたのは「やってみたいことがある人へのエール」であり、そのメッセージに向けて「変化を恐れず、やってみたいことにチャレンジする人」と「変化を恐れ、思いとどまらせようとする人」の対立の構図を家族関係の中で表現したドラマだった。

母・千華子の言うことを聞いて生きてきた萌子美が兄の経営する花屋で働き始め、モノの気持ちがわかる感覚によって生き生きとしたフラワーアレンジメントを作りあげたことをきっかけに、その感覚を世の中のために使おうと樹木医を目指すようになる。ここから感じたのは「人と違うことを恐れる必要はない。それはヘンなことではなく個性であり、個性を生かす道を見つけて進めばいい」というメッセージだった。

そんな萌子美を筆頭にやってみたいことにチャレンジする人が増えていく中、思いとどまらせようとする役目を一身に背負う母・千華子は一見すると損な役回りだ。だが、母と娘の明確な対立の構図があってこそ成立するドラマであり、抜群の演技力を誇る富田靖子さんが現実にいてもおかしくない過干渉で支配的な母を演じたからこそメッセージが明確になったと言えるだろう。

やりたいことを見つけ、それを諦めず、新しい世界へ踏み出そう

最終話の萌子美の姿を見て思い出したのはスティーブ・ジョブズ氏のこの名言だった。

「人生は短い。他人のいいなりになるな。常識にとらわれるな。周囲の雑音に惑わされるな。そして最も重要なのは、勇気をもって心の声や直感に耳を傾けることだ。何者になりたいのかは、自分自身が一番よく知っている」

『モコミ ~彼女ちょっとヘンだけど~』と同じ土曜ナイトドラマ枠の『妖怪シェアハウス』でも、やりたいことを見つけ妖怪たちが戸惑うほど見違えるように逞しくなり旅立つ女性を小芝風花さんは演じていた。同年代の女優さんがラブコメや愛憎渦巻くドラマのヒロインを演じることが多い中、小芝風花さんはメッセージ色が強い作品でキャスティングされる傾向が強い。それは、悩み、迷い、考え、成長し、新しい世界へと踏み出す女性をリアルに演じ、その作品のメッセージを視聴者に届ける演技力があると認められていることの証だろう。一過性の消費されるだけの作品ではなく、元気がない時や迷った時、勇気を出したい時にまた見たくなる。そんな心に残る作品に必要な女優さんであることを証明するドラマだった。

「やりたいことを見つけ、それを諦めず、新しい世界へ踏み出そう」

そんなメッセージを視聴者に届け、新しい世界へ踏み出すことの素晴らしさを伝えられるのは、確かな演技力をもつ役者さんだからできることだ。うわべだけの演技ではメッセージは届かず、視聴者の心も動かない。小芝風花さんが起用される理由はそこにある。

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