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#162 アンチヒーロー(2024)-犯罪被害者支援に光を当てた稀有の作品

TVer 紹介文

長谷川博己主演!“アンチ”な弁護士は正義か悪か?新たなヒーローが常識を覆す、逆転パラドックスエンターテインメントが始動!長谷川が演じるのは犯罪者である証拠が100%揃っていても無罪を勝ち取る、「殺人犯をも無罪にしてしまう」“アンチ”な弁護士。ヒーローとは言い難い、限りなくダークで危険な人物だ。「弁護士ドラマ」という枠組みを超え、長谷川が演じるアンチヒーローを通して“正義とは果たして何なのか?”“世の中の悪とされていることは、本当に悪いことなのか?”を問いかける。スピーディーな展開で次々に常識が覆されていく完全オリジナルストーリー!そのほか共演には、長谷川演じる主人公の事務所で働く同僚弁護士役に北村匠海と堀田真由、パラリーガル役に大島優子、東京地検の有能な検事役に木村佳乃、剛腕検事正役に野村萬斎ら豪華キャストが顔を揃える!

TBS日曜劇場健在を知らしめた久々の超大作

番宣の時点では、日曜劇場特有の煽りドラマだと思っていた。特に序盤は、保身のためなら有罪を無罪にひっくり返す悪徳弁護士(長谷川博己)と同等の手口を使う性悪検事(野村萬斎)の戦いが描かれていると信じ切っていただけに、回を追うごとに、展開が急転直下し、序盤の裁判がすべてひとつの冤罪事件に繋がり、初回からの展開がすべて最終回の伏線になっていることが理解でき、脚本のレベルの高さに「降参」せざるを得ない状況だった。日曜劇場でこの興奮はいつ以来だろう?うーん…。

てっきりこのふたりの戦いかと思いきや

深く心に刻んだメッセージ

それは犯罪被害者への配慮や加害者への戒めであり、双方を法で守ろうとする姿勢だった。その象徴が序盤で無罪判決を勝ち取った緋山(岩田剛典)と明墨(長谷川博己)の最終回ラスト5分のやりとりに凝縮されていた。とりわけ、「罪を償うため必ず生きろ」という明墨のメッセージ、そして、服役中に被害者家族に手紙を書く緋山にグッときた。ここまで被害者感情に寄り添ったドラマは見たことがない。このシーンの直後に楽曲「hanataba」が挿入され、思わず硬直した。

明墨からの通達に自身の非を思い知らされる緋山

グッとくる演出(1)

冤罪が立証され、出所後、娘と抱き合う志水(緒方直人)に涙した視聴者は多いはずだが、私が感動したのは抱き合う直前、娘に向かって駆け出す糸井の足が刑務所の敷地外に踏み出すシーン。手が込んでいると言えばそれまでだが、何度も繰り返し視聴してしまうドラマファンの心理をよく理解されているなぁと感服。

細かすぎて伝わりにくい演出

グッとくる演出(2)

このドラマでは、能楽師・野村萬斎だけでなく、超イケメン俳優・藤木直人まで冤罪事件に手を染める。自らの意志とはうらはらに、巨大な権力に巻き込まれた末の隠ぺいであったが、裁判ですべての罪を認め、面会で娘(堀田真由)の弁護を断る際、「娘に弁護してもらうのは格好悪い」とはにかむ姿に少し救われたような気がした。「アンチ」のイメージの強いドラマだったが、ちょいちょい挟み込まれる人情噺のスパイスが結構効いていた。

加害者でもイケメン枠は不動

演出・脚本の遊び心

良いドラマは役者とスタッフが一体となってドラマを楽しむ傾向がある。このドラマの場合、明墨の決めセリフ(私があなたをお救いしましょう)を最後に赤嶺(北村匠海)がオウム返ししたり、ちょい役同然の大島優子が最終回直前に裏切って存在感を示したり、同様に存在感を示せないままの木村佳乃が最後の最後にどんでん返しを演出したり、考察好きのドラマファンのために、仲間の名前にすべて「色」を含めたりと、話題にこと欠かなかった。

これを見破るファンも凄い

いちばん心に残ったキャラは…

なんといっても桃瀬礼子(吹石一恵)でしょう。死の淵に立たされてもなお弱者の立場に立ち続ける強い意志が、明墨の正義感に火を点け、他の仲間に連鎖していったワケで、まさにこのドラマのキーパーソンだった。

ものすごい存在感でした



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