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#128 カーネーション(2011)-最後の1か月を除けば朝ドラ史上不朽の名作①

NHKアーカイブズ紹介文

大阪・岸和田の呉服店に生まれた小原糸子。ドレスにあこがれミシンに出会い、父の猛反対にもくじけず洋裁の道を突き進む。20歳で自分の店を開き、結婚するが夫は戦死。子育てやさまざまな苦難を乗り越え、日本のファッションデザイナーの草分けとなったパワフルな女性の一代記。国際的デザイナー・コシノ三姉妹の母がモデル。

人の心の奥底に訴えかける名作

他に類を見ない、インパクトの強い朝ドラでした。女性創業者の一代記という枠組みを超え、女性の生き方、働き方、戦争、不倫など、心に深く突き刺さるシーンやセリフで埋め尽くされた名作でした。キャラ全員が愛おしく、至る所に伏線が張られた高度なドラマでもあり、その魅力を1回で説明するのは不可能だと判断し、2回に分けることにしました。

第8週 果報者

厳しい女性蔑視の時代にあって、ミシンと出会い、洋裁の魅力に惹かれ、父親(小林薫)の信頼を少しずつ得ながら、結婚に至る週です。結婚式直前のトラブルを乗り越え、大幅に遅れて始まった式場で、あらゆる関係者に祝福される糸子(尾野真知子)が愛おしく感じられました。また、この週は、戦争の惨禍へと突き進む直前の不吉な週となりました。

チョー幸せな宴の席

第11週 切なる願い

すっかり年老いて弱気になった父親・善作(小林薫)が火事に遭い、瀕死の重傷を負います。かろうじて命をとりとめた善作を勇気づけるため、町の仲間が温泉旅行に誘います。出発前、糸子はお酒好きな父親のために、水筒にお酒を詰めて持たせますが、旅先で病状が悪化し、再会した時の父は遺影でした。この週の凄まじさは、死亡通知が届く前日に父親との死別のイメージが糸子に降りてきたこと、そして、外で泣き崩れる糸子の姿でした。恐ろしく神がかった悲痛な週でした。

暗闇に向かって泣き崩れる糸子

第12週 薄れゆく希望

お父ちゃんとの別れを済ませた後、幼馴染の「ヘタレ」の勘助(尾上寛之)との別れが待っていました。日中戦争で心を病み、強制帰国させられ、引き持ってしまう勘助を勇気づけようとした糸子の試みがすべて裏目に出て、糸子は安岡家から絶縁されてしまいます。それでも健気に生きる糸子を見て、糸子に告げずに再出兵する勘助、気づいて電車を追う糸子、出征後すぐ法要を受けることになる勘助の遺影。「反戦」以外のフレーズが出てこない、前半戦の大きな山場でした。このドラマの前半部を印象付けた立役者は、まちがいなく善作と勘助だったと言っても過言ではないと思います。(つづく)

糸子に告げず出征する勘助
帰ってきた勘助

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