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#158 救命病棟24時(1999, 2005)-江口洋介&松嶋菜々子だからこそ描けた「いのちの戦場」

テレビ新広島紹介文

大都市のど真ん中にある大病院の救命救急センター。ケガ人、病人、命を落とす者、救われる者、そして医者、看護婦のドラマが連日連夜繰り広げられている。そんな「いのちの戦場」の研修医となった小島楓(松嶋菜々子)は指導医である進藤一生(江口洋介)と初日から衝突。医者としては新米で半人前で、見習いの中の新弟子とも言える研修医、そしてクールで現実主義の天才医、この二人の間の対立、理解、そして…。医療の現場をとりまく喜び、かなしみをヒューマニズムあふれる視線で描く人間ドラマ!!

ひたすらクールな江口洋介と感情剥き出しの松嶋菜々子

奇跡のコラボ

1990年代、トレンディドラマでチャラい役を演じてきた江口洋介さんが、冷酷かつ冷静な凄腕・外科医へと変貌を遂げ、「GTO」「やまとなでしこ」で大ブレイク中の松嶋菜々子さんが感情剥き出しの研修医を演じ、彼女の葛藤を軸に展開するドラマ。あのタイミングでのこの共演は、まさにミラクル。視聴率が上がらないわけがない。S1放映時、「ER緊急救命室」に酷似しているとの批判を受けたが、それを凌駕する迫力があった。

最高の名作、シーズン1

最も心を打たれたのが、植物人間状態の妻の入院先を探し求めて、かつての仇敵たちに頭を下げる進藤(江口洋介)。医療過誤の責任を押し付け、振動を窮地に追い込んだ堺(杉本哲太)を許容する進藤。自らも生命の危機にさらされながら妻の回復に向き合う進藤。最終回、奇跡的な回復を遂げた妻に花束を捧げるも、結局死別することになった運命を受け入れる進藤。感情を吐露することなく、無表情を通す進藤のカリスマ性は凄まじかった。

鬼気迫る介護シーン

挑戦心旺盛なシーズン3

このシリーズの核は、東京を襲った直下型震災からの復興。まるで1995年の阪神・淡路大地震を思い起こさせるような描写の中、自宅に戻ることもできず、疾病や怪我に加えて、エコノミー症候群や鬱病への対応など被災地のケアに勤しむ医療現場のリアルが如実に伝わってきた。ややもすると震災経験者のPTSDを煽りかねない展開でもあったが、あえて明瞭に描いたことで視聴者の共感を得られたのだと思う。震災による怪我が原因で亡くなったフィアンセ・加賀(石黒賢)の亡骸と向き合う小島楓(松嶋菜々子)、死体の置き場所を探すシーンが残酷だった。

ふつうの医療ドラマなら助かる命

シーズン2・4・5への物足りなさ

シーズン2は松嶋菜々子不在が痛かった。売れっ子の松雪泰子伊藤英明では埋まらない溝が明確になったが、命と引き換えに医局を守った渡辺いっけいには胸を打たれた。シーズン4・5はドラマの軸が「命の病棟」から「小島楓成長物語」に変わってしまった。医局長へと登り詰める姿に「ER救急救命室」ではなく「白い巨塔」のイメージが重なったうえ、シーズン5では進藤が不在。視聴率も20.3%→20,3%→19.2%→19.2%→14.6%。改めてこのドラマが、クールな進藤&葛藤する小島に支えられていたことが明確になった。

渡辺いっけいさん(左)の存在感は際立っていました(S2)

ありがとう、ハッピーアワー

地域にもよるが、地上波での放映がほぼ不可能と言われていたシーズン1を含む4作がハッピーアワー(13:50~15:45)に一挙放映された。通常、フジTVの新作ドラマの番宣用に使用される再放送枠だが、何の番宣にもなっていないこのドラマを放映してくれたことに感謝。コンプラ等、様々な問題はあるが、良いものを視聴者に届ける精神を大切にしてほしい。


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