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【エッセイ】心の旅 2

 日本三景の天橋立へ旅行に行った。

 自分にとっては、最後の日本三景の場所。若者向けのゲストハウスで宿泊代も安かった。
 実家から京都へ行く時に、わざわざ数千円のホテルに泊まるのもどうだろうと考えて、結果、格安のゲストハウスへ泊ることを決めた。
 なぜ格安なのか? そのゲストハウスは本来は、学生の合宿用のような施設で、風呂もトイレも共同で部屋は相部屋だからである。

 相部屋なんて嫌だっていう人は多いのかもしれないけれど、自分はいつもは一人でいるから、たまには相部屋で同居人と会話したくなったのである。
 その相部屋の相手は、なんと日本へ出稼ぎに来ていたタイ人だった。外国人である。しかも、結婚して子供もいたとかなんとか。
 タイに帰国する前に、日本を旅行してから帰ろうという話を、彼が聞かせてくれた。

 その彼から、日本三景は全部見たかどうかを質問された。全部見たと答えたら感動された。
 自分からすれば、タイ人が日本三景を知っていることが新鮮だった。

 明日はフェリーに乗って、さらに日本海側の島へ行くという。自分も知らない観光地だった。
 日本三景の何に興味があるのか、魅力はなんだと聞いてみたら、魅力ってどういう意味ですか? と逆に質問された。
 タイ語には魅力に該当する言葉が無いらしい。
 魅力を日本語で説明してくれと言われて戸惑った。魅力は、魅力としか言い表せないでしょ。


 自分から話を合わせた面もあるけれど、横浜の駅ビルにあったタイ料理の話をした。
 自分はずっと前に、横浜の中華街へ行ったことがあって、その途中に、横浜駅の駅ビルの上にあったタイ料理店で昼食を食べたことがあって、その時に注文した麺類が、異常にまずく感じて、ほとんど残して店を出て行った時のことを話した。
 そうしたら彼は、自分の持っているスマホでいろいろ面料理を検索してくれて、これじゃないか? これじゃないか? と見せてくれた。
 正直言って、ほとんど覚えていなかったので、分からなかった。
 彼曰く、これはタイ料理ではまずいほうだとかなんとか……そう教えてくれた。




 ――もう一つ、面白い話をしよう。

 お好み焼きの話である。

 大阪のお好み焼き関西のお好み焼きと、広島のお好み焼き、つまり、広島焼きの話になった。
 タイ人の彼は、広島焼きはお好み焼きじゃないと言い張った!
 お好み焼きの中に、焼きそばがはいっているのがナンセンスだという。

 自分はそうは思わないし、広島焼きもおいしいと思っている。
 その会話でそうだ! いや違う! という食文化とは言わないけれど、好みの話で盛り上がった。

 更に、その話から、もんじゃ焼きの話に変わった。
 あんなの食べたくないと言われた。見た目が嫌だという。
 外国人はもんじゃ焼きの見た目が苦手な人が、やっぱり多いと思った。


 ――なぜ、この話をするのか。養老先生の話から思い出したのである。
 先生の著書「手入れ文化と日本」を思い出したのである。

 そこには猫とキュウリの話が書かれてあった。
 養老先生が自宅でしばらく1人でいる時があって、いくつかあった猫用の缶詰がなくなってしまった。
 その時に停電になる。飼い猫が足もとへ来てご飯をねだってくる。先生はしょうがないから冷蔵庫からキュウリを取り出して猫に食べさせようとしたけれど、猫は食べないのである。

 先生は言う。キャットフードもキュウリも消化されれば同じだと。
 でも猫は食べない。猫がしゃべることができれば、キュウリは嫌いだと言うらしい。

 なぜ、こういうことになるのか? それは脳のバイアスが好き嫌いを決めているからである。
 猫にとってはキャットフードが食事である。そこにキュウリをもってこられても、それがたとえ栄養があっても猫にとっては、まったく食べたことがないエサである。
 そもそも猫にはキュウリを食べる概念が無い。無いから、たとえ栄養があっても食べないのだという。


 これは人間でも同じ現象があると思う。
 一番分かりやすいのが、東日本と西日本ではうどんの汁が違うというやつである。

 東日本のうどんの汁は濃いけれど、西日本のは薄味という違い。
 東日本のうどんは明らかに東北や北国の影響だと思う。寒いところの料理の味付けは濃い。
 それに対して、沖縄などの南国では味付けにする塩分が少ない。


 結論。
 私は日本を代表して、粉物を弁護しました。


続く


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