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篠穂の滝(の見える丘)へ @25

奄美大島で秘境の滝というとタンギョの滝があるが、もうひとつ秘境中の秘境の滝がある。それが篠穂の滝だ。いつか行きたいと思うのだが、しかしこの滝、山から直接 海へ流れこむ滝なので、船をチャーターして海からしか見ることができないのだ。あるいは近場の海岸から泳いでいくか・・

だが、陸から遠目にこの滝を眺めることができる場所があることがわかった。でも途中の道が崖崩れで封鎖されていたり、そこまで辿りつけたとしても草に覆われて見れない場合があるらしい。ようするに運任せなのだ。


というわけで、運任せで篠穂の滝(の見える丘)へ行ってきた。

マングローブ原生林を左手に見ながら市集落へ向かう。集落を右に抜けて、嘉徳へと通じる林道にはいっていく。林道をしばらく上ると左に青久へ下る道があるが、右の嘉徳方向へそのまま進むことにした。ここからしばらく行くと、写真のような篠穂の滝が見えるポイントがあるはずだ(写真は他サイトより拝借)

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青久と嘉徳、久しぶりに行きたい気持ちをここはグッとこらえる。今回の目的は篠穂の滝だ。懐かしいそのふたつの集落を思いだしながら林道を奥へ奥へと進んでいくが、行けど行けど滝の見えるポイントが見つからない。

このまま進んで行ったら、それこそ嘉徳まで辿りついてしまう。それはそれでいいけどね。

この市~嘉徳線の林道は野生動植物の宝庫だった。
 
目の前の鳥が、まるで僕の車を誘導しているように飛んでいる。あの鳥はヒューズだろうか。ヒューズに先導されて車を走らせていると、突然「ガァー、ガァー、」と、遠くからルリカケスが自分の縄張りを主張してきた。その声でヒューズはサッといなくなる。
 
ルリカケスの吠える道は、この先をさえぎるようにススキに覆われている。慎重に車を進めると、その先には苔につつまれた緑の道が広がっていた。そして、苔のうえに大量のアミノクロウサギの糞が落ちているのだ。尋常じゃない糞の量だ。大所帯のクロウサギ家族が、それも集団で住んでいるのだろう。それとも違う獣の糞なのだろうか、クロウサギの糞にしてはやけにデカい。

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このまま滝見のポイントが見つからなくても、夜まで待てばアマミノクロウサギに逢えるかもしれない。と、思ったがやめた。クロウサギではなく、あのデカイ糞の持ち主のとんでもない獣に遭いそうだ。
 
見渡すと、ヒカゲヘゴがそこかしこに直立している。その太古を彷彿させる荒々しい立ち姿が好きだ。葉が落ちたあとの幹についた楕円形の模様は、古代ローマのコロッセオで戦いぬいた勇者たちのようだ。そしてその勇者を守るように包みこんでいるのが、野生の王であるマンモスのゴワゴワした毛だ。

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この模様でヒカゲヘゴの雄・雌が区別できるらしい。でも判別の仕方はわすれてしまった。
 
ルリカケスの遠吠えが消えると静寂の森になる。なんか白いものが天から舞ってきた。目の前にスーっと音もなく着地する。手のひらに乗せてみる。これはケセランバサランだろうか、それとも妖精の羽根だろうか。ここにはケンムンと妖精が同居しているのかもしれない。

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それらしき場所はあったが、眼下の海を見下ろしても滝がどうしても見あたらない。ここか?ここなのか?確信がもてないまま更に進んでいくと、とうとう林道終点の嘉徳集落まで来てしまった。

3年ぶりの嘉徳だ。

前は国道側からきたので見れなかった浜の全景。感動しかないね。やっぱりこの浜は奄美で一番美しい。砂浜の中央の潮溜まりがキラキラ光って長い水の道をつくっている。素晴らしい光景だ。いや、感動している場合ではない。篠穂の滝(の見える丘)の情報収集しないと・・

前にきた時に寄った藍染の「よしかわ工房」に行ってみた。が、どうやらもう工房はやってないみたいだ。がらんとした工房跡に、あの猫だけが淋しそうに留守番をしていた。浜に下りると釣りをしているのおじぃがいたので、さっき撮ったそれらしき場所の写真を見せて訊いてみた。

「ああ、そこじゃがね。ちょうどその下の方に滝あるよー」やっぱりあのポイントだったのか・・

さらにおじぃからとっておきの情報が。「くる途中に青いベンチがあったでしょ。そっからだとはっきり滝が見えるよー。来た道を逆に戻っていったら白い橋があるから、橋渡って少し行ったらその青いベンチがあるがー」でも、来るときには青いベンチも白い橋も気がつかなかったが・・そこはおじぃを信じて、また林道を今度は市集落方面へと戻ることにした。

白い橋、あった。
そして、
草むらに覆われた青いベンチ、あった。

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やっと見ることができる篠穂の滝、

ベンチに立ちあがり海を見渡す。

でも・・岬や浜は見えるが、やっぱり滝が見あたらない。薮をかき分けススキをかき分け、小ぶりな木に登って海を見回す。しかしやはり滝はどこにもなかった。

ここも違うか。

どこなんだ
篠穂の滝

家に帰って、撮った写真を全部くまなくじっくり見てみたら、やっぱりそれらしき場所の写真が一番それらしいね。拝借した写真と見比べても似たような風景だ。たぶんギリギリのところで草に隠れて見えなかったのだろう。

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幻の篠穂の滝
いつか行ってみたい。


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