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book.1 台風の眼

古本屋でお気に入りの本を探すのが好きだ。選ぶ基準は本の「タイトル」と「ブックカバーのデザイン」から直感で選ぶ。だから内容自体は非常に当たり外れが多いのだが、好みの本に出会えたときの憘びはひとしおだ。そして読み終えた本は、溜まったらまた古本屋に持っていって処分する。

同じ店の同じ棚にいる同じ本でも、手にしたその日の気分によって全く違う表情が生まれるからおもしろい。感覚が研ぎ澄まされて絶好調なときには、本の方から「どうぞ私を選んでください」と語りかけてくる。

しかし、奄美には古本屋がない。TSUTAYAの「ブックマート」と「奄美庵」くらいじゃないだろうか。せっかく奄美大島にいるのだから本など読まずに大自然に触れなさい、という事なのだろう。


「台風の眼」 日野啓三

これも古本屋で見つけた当たりの方の一冊。ストーリーがあるわけでなく、過去の情景をただ淡々と作者が語っているだけだ。それは中国の片田舎だったり殺伐とした出来事だったり。しかし、そこには常に死の匂いがつきまとっている。台風の眼とは、死と対峙し過去をなぞっている作者の目であり、その死の匂いから生を読みとる自分自身の目なのだと思う。

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