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蘇鉄の島 @42

この島は蘇鉄がよく似合う。


蘇鉄 ソテツ
・ 鉄が蘇る
・ 鉄を蘇らせる

大島紬のあの渋く深みのある黒色は、泥染めの工程で鉄分の化学反応によって生み出されたものだ。鉄分の減った泥田にはソテツの葉を入れて鉄分を補っていた。幾年ものあいだ蓄泥された土と、ソテツで蘇生された新たな鉄により、大島紬はますます深い黒になってゆくのだ。

かつて奄美が薩摩藩に統治されていた時代、藩の厳しい年貢(黒糖)の取り立てで島っちゅは貧困に陥っていた。そんな島っちゅを救ったのもまたソテツだった。ソテツの幹の豊富な澱粉をお粥にし、その実は磨りつぶして味噌にし、それらを食糧にして飢えをしのいできた。まさにソテツによって、島っちゅの鉄のようなかたい意志が蘇ったのだ。

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ソテツは強い生命力を持っている。痩せた土地にもしっかりと根をはり、海岸の切り立った岩場にも平然としがみついている。その生命力がこの島の山を産み森を成し大自然をつくり上げた。その生命力が鉄を産み色を創り産業を成し、貴重な栄養素となって島っちゅを蘇生した。

蘇鉄は奄美大島そのものなのだ。



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