わんとワンの物語 14
ぼくたちはさらに南下する。長い雲のたつ峠を越え茶にそまる峠を越え、下降する。そこは大きな入江になっていた。その地にひときわ広いミャーを創った。そして入江と天の間に巨大な三角形の岩を浮かせ、背後にイノチの拝むカミヤマと白い花の咲くカミヤマを並べる。カミヤマから海に向かうカミミチに平行して、新しい水の流れるゴウといつまでも流れるゴウを置く。
ゴウの流れるこの地を 勝(ガチ)と名づけた。
カミミチに沿ってゴウの流れが海にとどく時、入江と天の間に浮かんでいた巨大な岩は、岸とネリヤカナヤの中間に降りてきた。天孫子がこの三角形の岩を伝って勝にきた時、国が始まる。いつかこの地は繁栄の国となる。ふたつのカミヤマと巨大な岩はこの国の象徴だ。たくさんの祈りはここに集まり、そして解放の時を待つだろう。
ぼくたちはさらに南下する。
より強い緑をイメージする。勝から南方は生い茂る深い森だ。深く濃い緑はたくさんのイノチを産み、イノチの宿るたくさんのコモリができる。蒼いティダの降るコモリ、羽ばたくものの宿るコモリ、新しい水の溜まるコモリ。ティダの降らないコモリにはヘゴを置く。羽ばたくものには赤青茶を配色し、森を駆けるものには黒を塗り、野を這うものには魂を入れた。
全てを創り終えた島を見てぼくは遠い記憶をたどる。かつてぼくは天から落ちる一滴の雫だった。落下しながらぼくは創られた。そして落ちながら生まれた4つの感情をこの島に降らせることにした。5つ目の感情は、やがてまた産まれ落ちるこの母犬の子供たちが持ってくるだろう。より強い感情となって。
ぼくとアマミコは海にある三つに連なる岩のいちばん沖の岩に立ち、更に南の琉球を望む。
この地にとどまり母となった犬の遠吠えがいつまでも島に木霊する。
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