わんとワンの物語 16
こんにちは。わたしはワン6号。わたしはカナシミの海から創られました。
わたしはこの宇宙にくるまえは水の宇宙にいました。水の宇宙にはまだ形のないわたしたちが6個ありました。そしてその宇宙の水にはたくさんのキオクが流れていました。わたしが掬いあげたのはアマミオオシマというキオクです。それを掬いあげた瞬間にわたしの中にカナシミという感情が生まれました。それが最初にわたしにできた感情です。
わたしたち6個はそれぞれが別々のたくさんのキオクを掬いあげました。でもそのキオクはこの水の宇宙を出て向こうの宇宙にいった瞬間に全て忘れてしまい、そこらから生まれた感情だけが残るのだそうです。
この水の宇宙から向こうの宇宙にいくことは、大変なユウキが必要です。なぜならわたしたちには形がないからです。向こう側から呼んでいる母の声を頼りに、真っ暗な水の中をシニモノグルイで進まなければなりません。わたしにはカナシミの感情があるのでそれはとても辛いことでした。
それでもなんとか4個は向こうの宇宙にいくことができました。残っているのはわたしともう1個です。わたしはどうしても向こう側へ行くことができません。そうなんです、わたしはヨワイの感情も持ってしまってたのです。もう1個は必死にわたしを励ましたりなだめたり叱ったりしながら向こう側に行く勇気を促してきました。そしてなんとかわたしも向こうの宇宙に行くことができました。
しかし、わたしはこの宇宙にたどり着いたとき、力尽きて死んでしまいました。でもわたしを追ってこの宇宙にたどり着いた最後の1個が来た瞬間、忘れてしまわなければならない水の宇宙のことや、そこから掬いあげた沢山の悲しい記憶が私の中に蘇ったのです。もちろん愛しい感情もそのままです。そしてそのまま私はもう1個の中に入っていったのです。
だから、わたしたちは5匹ではなくて本当は6匹なんです。私はもう1個の中にしっかりと生きています。
私はワン6号、そして5号です。
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