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密教(三論宗)と修験道

修験道は、森羅万象に命や神霊が宿るとして神奈備(かむなび)や磐座(いわくら)を信仰の対象とした古神道に、それらを包括する山岳信仰と仏教が習合し、密教などの要素も加味されて確立した。日本各地の霊山を修行の場とし、深山幽谷に分け入り厳しい修行を行うことによって功徳のしるしである「験力」を得て、衆生の救済を目指す実践的な宗教でもある。

修験道は、飛鳥時代に役小角(役行者)が創始したとされるが、役小角は伝説的な人物なので開祖に関する史実は不詳である。
修験道は、平安時代のころから盛んに信仰されるようになった。その信仰の源は、すでに8世紀からみられた仏教伝来以前からの日本土着の神々への信仰(古神道)と、仏教の信仰とを融合させる「神仏習合」の動きの中に求められる。

役小角

舒明天皇6年(634年)伝 - 大宝元年6月7日(701年7月16日)伝

白雉元年(650年)、16歳の時に山背国(後の山城国)に志明院を創建。翌年17歳の時に元興寺で孔雀明王の呪法を学んだ。その後、葛城山(現在の金剛山・大和葛城山)で山岳修行を行い、熊野や大峰(大峯)の山々で修行を重ね、吉野の金峯山で金剛蔵王大権現を感得し、修験道の基礎を築く。20代の頃に藤原鎌足の病気を治癒させたという伝説があるなど、呪術に優れ、神仏調和を唱えた。

役小角 634-701
空海 774-835

空海が伝えたのは真言密教。役小角はすでに呪術を使っていた。
元興寺で孔雀明王の呪法を学ぶとある。
元興寺(飛鳥寺)の建立は蘇我馬子で587年。孔雀明王、孔雀=サタンを表し、気になるところであるが、ひとまず脇に置いておく。
もう一つ、密教についての気になる記述。
「インドの錬金術が密教となり、密教は錬金術そのものであったとの仮説があるが、一般的な見解ではないし、また仏教学の研究でも検証されていない。」
一般的には密教とは日本では真言宗の東密や天台宗での台密を指すが、インドやチベットにおける同種の仏教思想も含めて総称することもある。

日本の仏教の大まかな流れ

奈良時代に伝わった仏教は、護国のための雨乞いなど、現世利益的な密教だったらしい。

さてさて、役小角は元興寺で孔雀明王の呪法を学ぶとあるが、この孔雀明王の呪法をググるとトンデモ話ばかり出てくる。ま、たいていは、孔雀が毒蛇を平気で食べることから、蛇避けの呪法であった、とされている。(毒蛇がそれほどいない日本でそれはそれほど必要だったとは思われないから、別の何かがあっただろうとわしは思っている。)
ところで、役小角にこの呪法を教えた人物として、慧灌僧正の名がある。

慧灌は高麗出身の実在する僧で、隋の嘉祥寺で三論宗を学び、625年に渡来している。
この、三論とはなんぞや、と調べると、インド中間派の龍樹の「中論」「十二門論」とその弟子の「百論」を合わせて「三論」と言うそうだ。
この龍樹=ナーガールジュナという人物、実に興味深い。

飛鳥・奈良時代、超人的な人物としては、役小角に先駆けて聖徳太子が存在している。
聖徳太子が存在したか、誰だったのか、これを調べるのは、ちょっとしたロマンだ。わしは蘇我馬子の長男、蘇我善徳説を推したい。この善徳は日本最初の寺である元(法)興寺の初代寺司だ。
聖徳太子の師とされる渡来僧、慧慈と慧聡は、三論宗の僧で、共に元興寺に入っている。

ここから考えるに、日本に最初に伝わった仏教は、三論宗ということになるだろう。
三論宗は、孔雀明王の呪法を持ち、雨をもたらし、政敵を呪うことができ、人に神通力を与えることができた…と考えられる。
そうそう、この頃から長男を僧にするということが始まったらしい。僧は、書記(当時漢字が入ってきた)や外交官になりうるということだ。

聖徳太子の時代から100年ほどたって、古事記日本書紀が作られる。
この記紀に呪術的なものがあるや、なしや、というところも、気になるポイントである。
記紀の編纂には、藤原不比等、長屋王、舎人親王などの名があるが、僧の道慈も関与したという異説がある。この道慈は三論宗の僧で、役小角に孔雀明王の呪法を教えた慧灌(慧灌の弟子という説もある)を師に持つ。
また三論宗だ。

三論宗(さんろんしゅう)の三論とは、インド中観派の龍樹の『中論』『十二門論』、その弟子提婆の『百論』を合わせた「三論」をいう。
龍樹は漢訳名で、サンスクリット語ではナーガールジュナといって、150年から250年くらいの人だ。
同一人物とされる龍猛(りゅうみょう)は、6世紀頃の人ということで、こちらの人は仏教の僧というよりも真言密教、錬金術の学者として著作伝説がある。
日本に伝えられた三論宗には、龍樹と龍猛の両方の教えがあったのではないか、というのがわしの推測だ。

修験道については、こちらを読んでみるのも面白いかも。

修験道の目的は密教と同様に「修行を通じて特別な力を得て民衆を救済する」というものです。
修験道は現世利益追求型の仏教になります。
加持祈祷などによる「ご利益」をフォロワーに提供することが目的になります。
加持祈祷のスキルの根拠となるのは修行で得た力であるため、この修行に対して修験道は重きを置いている宗教ということになるのです。

何か気づいたことがあれば、随時付け加えていきたいと思います。


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