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272DAY -2023奥多摩見聞録 其の2-

 西武新宿線始発に乗り込んだ自分は、電車で何度も睡魔に襲われながら奥多摩古民家に向かった。学校の所為で参加日数が三日間に減ってしまったという歯がゆい面持ちで電車に揺られた。

 御嶽駅に到着すると、先生に迎えを手配してもらおうとも考えたが、曇りで程よい気温で、何より久々の奥多摩だったので、古民家まで歩いて向かうことにした。

 夏休みだからか交通量が多かった。おかげで自然にこだまする鳥の囀りや川のせせらぎを落ち着いて聴けなかったが、肺を満たす奥多摩産の空気でそれを許した。

 見飽きるようで見飽きない。もう幾度と観た景色を、いまだに体が欲しているのが分かる。

文明が大自然を切り裂いている。だが自然はそれにも構わず、自分のあるがままに存在している。


 古民家に到着すると、初日からの参加者が黙々と作業に取り組んでいる。全員机に課題を敷き詰め、眉ひとつ動かさない真剣な眼差しが見える。しかしながら、時折集中が切れて周りにちょっかいをかけに行き、先生に指摘されて渋々机に戻るまでがテンプレートだ。しかしその何分後かには、また机にしっかり向かっているのである。

開放的に見えて、机の一つ一つが彼らの世界である。彼らの世界の問題を、先生と二人三脚で解決する。その光景を、美味しい空気と自然のイントネーションが包み込む。

 自分一日目の昼食は、味噌豚定食。味噌の程よい甘味に米をかき込む手が止まらない。他はプチトマト、ほうれん草や、オクラ、いんげん、人参の胡麻和え、大和芋。胡麻和えの甘みも程よく、それらをオクラや大和芋の粘り気が包み込む。噛み砕いて飲み込んだ時の喉越しは最高だ。米はあきたこまち。

久々の原飯。南アジア仕込み(なのかは知らない)の匠の技が発揮される。大澤・原両先生あってこその至高の昼食。

 昼食を食べ終わると、すぐさま参加者は川に下っていった。夏の川はさぞかし心地良いに違いない。と、思っていたが、ここにきて雲行きが怪しくなり、ついには雨が降り出してしまった。山奥には雷鳴が鳴り響き、残念ながら川遊びは中断を余儀なくされた。

 しかしながら、雷鳴が鳴り響いているにも関わらず平気でいれている。自分が雷恐怖症であることは他の記事でも触れている。普段なら動揺しているところなのに、本当に驚いた。やはり集団意識には、恐怖症を超越する力が眠っているのかもしれない、と思う。

 中断した後は、川遊び組は読書や将棋に興じていた。途中ゴキブリも出たりした。しかし流石は夏合宿に来ているだけはある、全員それを悉く面白がっているように見えた。

 学習時間に戻ると、全員スイッチを入れたように机に戻った。楽しみは終り、自分の課題を片付ける。

午後の勉強。

 午後4時。始発出発のつけが回ってきたように眠い。

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