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イリュージョン落語「胴切り」

◆古典落語「胴切り」が面白い

古典落語に「胴切り」というネタがあるんだけど、これがあまりにもアバンギャルド過ぎて面白い。

ざっくりいうと「侍に斬られて上半身と下半身に別れてしまった男が、上半身と下半身それぞれで、その後の人生を歩むために、上半身と下半身別々に職を探す」という話。

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落語家にしてみると、座布団に座っているから上半身の方は演じやすいけど、下半身だけという存在をどう演じるかに腐心するらしい。

ある人は高座に膝立ちになったり、また別の人は指で表現してみたり。それでもなかなかこたえは見つからないという。

僕は「その下半身だけの人を見た”まわりの人のリアクションだけ”」でどうにか表現ないものかと考えた。

噺家でもないくせに考えた。

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◆職を探していた下半身がある会社の面接に

・下半身が面接のために会社にやって来る。下半身だけ人間とすれ違った人が一言「あいつ、下半身だけなのに会釈してきやがる」

・面接に来た下半身の様子を見ていた社員が一言「なぁなぁ、聞いたか?あの下半身だけのやつ、この仕事の面接の時、ネクタイ締めてきたらしいぞ」

◆下半身は見事、面接に合格。いよいよ入社

・入社した下半身と話したという先輩社員が、別の社員に話す。「あの下半身だけのやつに初任給で何買うの?って聞いたら、通勤用のショルダーバッグですだってよー!ショルダーなんかねぇじゃか!」

・先輩女性社員が新しく入って来た下半身のことを噂する。「ねぇねぇ、あの人かっこいいわよね。特に目鼻立ちがはっきりしてるところが最高よね」

◆会社で注目の下半身人間が会社に来なくなった

・しばらく勤めていた下半身が会社に来なくなった時の社内での噂話。

「あの下半身だけのやつ、最近見かけないけど、辞めちゃったのか?」

「いや、病気しちゃって長期の休みらしい」

「なんの病気なんだ?」

「なんでも、肺炎になっちまったらしい」

「下半身だけなのに肺があるのかよ」

「このまま休み続けたら、あいつクビ切られるらしいよ」

「あいつに切られるクビなんかねーじゃん」

◆しばらくして、職場復帰した下半身

・病気から復帰してきた下半身と会話する同僚

「お前、病気から復帰して、何か健康に気をつけてやってることあるのか?何ぃ!?半身浴!?それ、お前にとっては全身浴だろ!」

「てか、お前のなんていう病気で休んでたの?え?忘れたの?思い出せない?思い出せそうで思い出せない?喉元まででてる?お前に、喉元なんかねーよ」

◆仕事にも復帰し、下半身にも結婚の話が

「あの下半身だけのやつ、今度お見合いするんだって」

「え?あんなのと結婚する女いねぇだろ!」

「いや、違う違う。素敵な上半身とお見合いなんだって」

「素敵な上半身って、どんな上半身なんだよ!」

「あいつがいうには、美脚らしいぞ」

◆仕事も家庭も幸せ、。そんな下半身に変化が

「なぁ、あいつ見たか?下半身だけの」

「見たかって、今さら驚くことじゃないだろ。あいつももうここで働き始めて随分経つ。俺らにとっては何も珍しくないじゃねーか」

「違うんだよ。よーく見てみろ。なんか一年前にここに来た時より、ちょっと上半身が生えて来てねぇか?」

「わ!ホントだ!」

おしまい

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