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【読書録003】『上達論 基本を基本から検討する』

音楽関係ではないが音楽家にオススメの本を紹介します。

『上達論
 基本を基本から検討する』

著: #甲野善紀 #方条遼雨 2020年

武道家の方による、武術の本です。
まず序文をご覧ください。

甲野善紀先生は物事の習得において、『基本をひたすらに繰り返せ』といった練習法に否定的な立場を取られています。
それは、「この世に基本など存在しない」と言い切っているのではなく、
「安易に基本を定める」事の危険性について語っているのです。
特定分野に熱心に取り組んだ人ほど習得が遅い
「挫折をした人」と「残った人」。
この違いは何なのでしょうか。
それは「基本に替わるもの」を手に入れた人達だと私は考えています。

えっ、なに?
どゆこと?
購入決定!

武道と音楽なんて、一見すれば異なる、どころか相反するものではありますが、
奈良市出身の偉大なるロックドラマー故樋口宗孝氏がかつてスティックのグリップを「剣道の竹刀の絞り」で喩えていたこともあったりして、
ことドラムに関しては、武道とあながち無関係ではないと個人的に思っています。

そういえばK's musicも、「古武道から足さばきのヒントを得た」みたいなことを言ってたような気がする。

ドラムというものは打点はわずかコンマ数秒の世界で、それに至るまでの手足や体軸の空間移動がメインとなる楽器ですからね。
さらに私は基礎練マニアとして、色々な基本の習得にかなり時間を費やしました。

しかしながらこの本は、そのような熱心さも心構え次第では毒に転ずる、ということを示唆してくれています。

と、まず序盤でホホウと唸らせられ、そして実はこの「基本の考察」フックも導入部でしかなくて、
読み進めれば次第に、ドラマー以外の音楽家にもオススメできる理由も分かってくるでしょう。

▼二十、解釈の精度
▼三十二、武術と創造性
▼四十九、依存
▼五十ニ、根本原理組み替えの三原則
▼八十七、考察
▼百十、武装解除

は特に面白かった。

というか全般、語り口が軽妙で、読んでいて飽きないんです。
メイン著者の方条遼雨氏は、たぶんエッセイ作家に向いてる。

▼八十四、身の程
自分の「苦手」を知らないと容易に
「妄想」が入り込みます。
「やっていないだけで、本気を出せば
自分ならできるはず」という妄想です。


というようなスパイシーな切り口も時々入ってきて、
終始ワクワクしてしまいました。

読み終わった頃には、武道と音楽って実は根底は似てるよね〜っていう清々しくも暖かい気持ちになると思います。


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