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【読書録007】『メタル脳 天才は残酷な音楽を好む』

私の好きな脳科学・認知科学界の雪女、中野姉さんの数ある著作の内で、とびきりの問題作を紹介します。

『メタル脳
 天才は残酷な音楽を好む』

著: #中野信子 2019年

■先に言っておきますが、

この本ははっきり言ってかなりヤバくて痛くてキモい本でありまして、万人にオススメできるものではありません。
そもそも実用書よりエッセイに近い。

「え!?へヴィメタルってそんな効能があるの!?興味あるぅ~」
ぐらいの生半可な気持ちでは、
かえって途中でシラけてしまうか、
イライラさせてしまうか、
失笑してしまうか、
動悸が激しくなる、
息切れがする、
不整脈、頭痛、腰痛、嘔吐、痙攣、
リウマチ、肩こり、鼻づまり、鼻血、
耳血、くしゃみ、しゃっくりなどの恐ろしい副作用を起こす危険性があります。

ロック音楽を聴いて、ロックンロールかハードロックかパンクロックかヘヴィメタルかミクスチャーかの判別くらいは秒速でできるという人だけが鑑賞に耐えうる、奇書もしくはギャグだと思って下さい。

備忘録的に私個人が目に止めた(付箋を貼った)各章キーフレーズを列記します。
それでもなお「気になる!」という方は、一読をオススメします。
というかこの本は面白すぎて、こういう紹介の仕方しかできません。
 

■まずはじめに、第1章で中野姉さんのメタル愛好の来歴を知ることができます。

主に10代の頃のエピソードが語られるのですが、「女性性」のくだりを除外すれば、私の青春時代のそれと完全に合致します。

〉「孤立してもいい」という安心感を与えてくれた
〉メタルが自己評価の低下を食い止めた
〉メタルは緻密な「足し算」の音楽
〉世の欺瞞に対するルサンチマンを奏でる音楽
〉人間のネガティブな部分に向き合う音楽
 

■第2章では、メタルの聴き方やファン心理を分析されています。

マイノリティであるがゆえの強みと弱みを、お得意の脳科学・認知科学によって典型的なメタルファンを丸裸に。

しかし逆にそこまでステレオタイプなメタラーいるかな?とも思われ、共感ポイントがあるか無いかは個人差があるでしょう。

〉「怒りの音楽」が怒りを緩和する
〉メタルは「反社会的」ではなく「非社会的」
〉非社会的であることが強い「個」を育む

※「社会に吠える・牙をむく(=反社会)のではなく
関わらない・愛想も振らない(=非社会)」
という説明は、まことに我が意を得たりと思わず膝を打つものだった。

■第3章では、メタルがもたらす人生への影響について、事細かに解析されています。

〉メタルを聴くと認知機能が向上する
〉メタルは子どもを守ってくれる音楽
〉メタルは深い孤独感を癒してくれる
〉「内向性」が高い人はメタル好き
〉メタルを聴くと頭がよくなる
〉クラシックとメタルは共通点が多い
〉メタルファンはネガティブな感情に正直な人たち
〉メタルファンは「全能感」で自分を癒している
〉メタルを聴くと「ウソっぽいこと」を見破れる
〉メタルは日本人に向いている音楽

ほらね、ヤバいでしょう?
この章が1番キモい。
しかし、さすがは中野姉さん。
好きなものをキモいとか言うあまのじゃく精神すらも、メタル愛好ゆえとおっしゃっている。
ある意味この章がメタルそのもの。

■第4章では、メタルが世界に及ぼす影響についてを展開されていました。

〉メタルファンがポピュリストに嫌悪感を抱く理由
〉「個」を律しながらも、まだ見ぬ「家族」を求める
〉大人メタルファンが獲得するメタ認知
〉社会通念を打ち破るメタルの存在意義

世界情勢がポピュリズムに傾く現代社会。
対抗し打開しうるのはメタルによる「No!」を叩きつけることである、と。

こんなことをおっしゃられては、この本はメタル愛好家の必携の書と言わざるを得ません。
奇書もしくはギャグだなどと言いましたが、私個人は真剣に読み、心底から笑い、滂沱たる涙を流しました。
ぜひ皆さんは、こんな本を読まないで下さい。
 

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第1章
わたしを救ってくれたメタル

第2章
メタルが真の強い「個」を育む

第3章
モーツァルトよりメタリカを聴く

第4章
メタルは世界の欺瞞を見抜く

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