見出し画像

No.4【ネタバレあり】戦いの指揮者と才能 vol.2

No.3で武将の知略型と本能型の違いを説明した。

知略型同士の戦いは、鄴攻めの李牧vs 王翦(おうせん)に代表される。手の内の読み合いは凄まじい攻防であったし、知略型の戦いの利点や欠点が垣間見えた。本能型の戦いは王騎、麃公、信と龐煖の戦いであろう。知略型対本能型の戦いに学ぶことは非常に多く、コミックス27巻の麃公軍対趙軍の戦いはその代表となる。

画像1

武将には2種類あると言ったが、戦いにおいてはどちらの存在も重要になる。その象徴となる描写が作品中もある。それが『起こり』である。(コミックス56巻)

李牧が本能型最強の麃公軍の戦いを分析して編み出した戦い方であり、基本的には知略型の部隊にもかかわらず、相手の初動に合わせて戦い方を変えていくという本能型の戦いを混ぜた兵法である。

この『起こり』こそ、コロナとの戦いでも重要になるかもしれない。

ウイルスは、院内感染、施設感染、家庭内、帰省、渡航と様々な攻め方をしてくる。つまりあらゆる計画を練っていても、コロナはそのタイミングや組み合わせで無限の攻め方を持っている強敵なのだ。だから、『起こり』をみたらすぐさま戦術を切り替える戦い方を身につける必要がある。

言い換えれば、病院職員や行政職員はあらかじめ計画、指示された行動をするだけではいけないということである。

計画は事前に練られたものであり、いくら網羅したとしても限界がある。指示は問題と1対1対応の戦術であり、その実施する細かいタイミングまでは書かれない。つまり、目の前でコロナ関連のトラブルが起きそうになった場合(『起こり』をみた場合)に計画内にある指示を臨機応変にいち早く実戦する必要がある。

例えば、地域内の袖のないビニールのエプロンが切れたと病院が困っている情報を聞いたとしよう。

病院が供給を得られなくなるということは、介護施設や在宅医療の現場にエプロンが届かなくなる可能性が極めて高いのである。エプロンの消費速度は病院で月万単位である。いくら在庫が地域の福祉事業所にあったとしても、それらが切れて使えなくなる可能性が極めて高いのである。

これを『起こり』と捉えたら、地域の医療介護事業者全体にエプロンの節約と手作りエプロンの作り方の普及や材料の調達を指示できる。つまり、多くの人間が危機管理の現場で先手を打てるチャンスなのである。本能型の将軍が戦の炎として認識していた予兆を、知略型の将軍李牧と王翦は見事に分析して自軍に教えたのである。

それまで才能やセンスと言われた戦いの先を読む力が伝承されるようになったのである。

救急現場、災害医療に応用して考える。

私は救急医療、災害医療の分野で仕事をしており、危機管理を生業としている。この『起こり』を研究テーマにしてもいいくらい重要であると感じており、もし体系化できたとしたら、その基本は義務教育で子供たちにも伝えたほうがいいと感じている。

いかに『起こり』を見極めて手を打てるか。それが分かるようになるには経験と知識に裏打ちされた戦いの実力が必要なのである。キングダムが56冊目にして世に生み出したこの技は、きっと我々の対コロナ戦に必須の力となるだろう。果たしてそれを言語化して次世代に伝承できるか。我々の世代は後世に対して大変重要な役割を果たすに違いない。

本文を読んで気づかれたりしたことや、別の解釈をされた方は遠慮なくコメントを頂戴したい。現場の誰かを批判したりするつもりは全くなく、あくまでキングダムに感謝するイチ医者が書き留めた記録としてご覧になられたい。
また、良い内容だと感じられた場合にはシェアや拡散にて応援いただけると心から嬉しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?