ramp testではFTPは高めになる?

今回の記事は、私がfunrideさんの連載で掲載した記事の内容をより詳しく解説したものです。
連載はこちら

FUNRIDEの中でFTPに関して2回にわたって解説をしています。その中で特にramp testに関する質問を多くいただいたので、こちらで解説したいと思います。

そもそもramp testとは

zwiftで2018年ごろ登場したFTPテストの簡易版と有名になりました。

測定方法は、1分毎に20wずつ指定パワーが上昇していき、耐えられなくなった直前の1分間平均パワーからFTPを計算する、というものです。体重が軽い人や女性の方はlite versionである1分間の上昇幅が緩やかな方法で計測します。

ただ、やった人であればわかるんですが、多くの場合上振れします。つまり少し高めに出てしまうんですね。

なぜでしょうか。

ramp test はFTPを測っていない

funrideの記事でも触れましたが、そもそもramp testはFTPを計っていません。
ramp testで計測しているのは、MAP(Maximal Aerobic Power:最大有酸素パワー)と呼ばれるVO2maxに達する時のパワーです。
そして、FTPはMAP(VO2maxに達する時のパワー)の72~77%内に入るという前提の元、推測FTP = MAP × 75% という計算によって導かれています。
この72~77%という前提。出典は探しても探しても、コーガン博士のパワートレーニングバイブルしか出てきません。おそらく彼がプロチームを対象とした研究から算出された数値なのであろうと思われます。

さて、この前提、推測FTP = MAP × 75%は信用に足るのでしょうか。

100m全力で走るペースで400m走れるか?

結論を先にいうと 初心者ほどずれる数値になります。
なぜこのようになるのか、例として100m全力疾走で考えてみましょう。

皆さんの100mタイムが10秒だとします。とても速い。
では皆さんが今から400mを走ります。タイムは最速でどれくらいになるか、予想してみましょう。

最速予想タイムは、10×4=40秒になります。ただの掛け算ですね。

しかし、実際はそのようなタイムはでないことでしょう。距離が長くなると、100mのラップタイムは遅くなります。当然です。100m走る勢いそのままで400mを走る人はほとんどいません。

体力が持つように、ちょっとゆっくりめのペースで走るため、100mのラップタイムは12秒くらいになって、結果400mのタイムは48秒くらいになるんではないでしょうか。このように、全力疾走のペースで長い距離を走れる人はほぼ存在しません。

さて、ここで皆さんが過酷なトレーニングを積みます。すると、ペースをそれほど落とさずに走れるようになってきます。そうすると、100mのラップタイムは11秒くらいになって、400mのタイムは44秒くらいに向上することでしょう。

このように、トレーニングを積んだ人であれば、全力疾走のペースをあまりおとさずに長い距離を走れるようになります。

ramp testは短距離が得意な人ほどFTPを高く見積もる

さて、同じことがramp testでも起きています。

ramp testがやっていることは、100mのタイムから400mのタイムを予想するように、全力疾走最後の1分のパワーから、60分の全力パワーを予想しているんです。

1分ずつ上げていく、ダッシュで300w出しました。
そしたら、60分は3/4くらいのパワーで継続していけそうだねって予想のもと計算してます。

しかし、アマチュアはそんなことできません。絶対ペース落とします。実際は75%じゃなくて50%くらい。そうすると予想FTPが本来より高く出てしまうことになるんです。

私自身も、FTPが200wの時に挑戦してみましたが、ramp testでは推定FTPが220wとかなり高めにでました。

これはおそらく私が元陸上の短距離選手だったことも影響しているのでしょう。短距離が得意な人ほど、1分間パワーと60分間パワーの乖離は大きくなり、結果ramp testは高めに出てしまうと予想されます。


実走60分TTに勝るFTP計測はなし

結局のところ、信頼のおけるFTP計測は
実走60分TT > 20分TT > rampテスト
となります。

rampテストはお手軽なため、初心者の方に人気な傾向がありますが、初心者ほど誤差が出やすいことは心にとどめておいてください。

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