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2008年岩手・宮城内陸地震

こんにちは。今回は、2011年東日本大震災の3年前、2008年に東北に起きた内陸地震についてどのような地震で、なぜ発生したのか?今後、東北に同様の地震が起こる可能性はあるのか?を調べました
真面目にまとめましたので、興味のある方はご覧ください


6月14日08時43分ころ、岩手県内陸南部 (北緯 39度01.7分、東経 140度52.8分)の深さ8km(速報値は約10km) で、M7.2(速報値は7.0)の地震がありました
岩手県奥州市と宮城県栗原市で震度6強、宮城県大崎市で震度6弱を観測したほか、東北地方を中心に、北海道から関東・中部地方にかけて震度5強~1を観測した
発震機構は、西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、地殻内で発生した地震である
この地震による津波の心配なし
「平成 20 年(2008 年)岩手・宮城内陸地震」および「The Iwate-Miyagi Nairiku Earthquake in 2008」と命名した (2報)

気象庁から、1報2報3報4報5報6報7報8報9報10報 (終わり)
緊急現地調査速報(第1報)

地震はこうして起きた


当日、気象庁から 14日10時現在、震度1以上を観測した余震は41回で、09時20分のM5.6(速報値)で、宮城県大崎市で震度5弱を観測しました。
なお、岩手県、宮城県で震度5弱以上を観測したのは、2005年8月16日に発生した宮城県沖の地震(M7.2)で宮城県で震度6弱、岩手県で5強を観測して以来です。また、この付近の地震で震度5以上を観測したのは、1996年8月11日のM5.8の地震で 宮城県栗原市で震度5を観測して以来です。
揺れの強かった地域では、土砂災害や家屋の倒壊などの被害の可能性があります。余震により、被害が拡大する可能性がありますので、十分注意してください。
なお、08時43分のM7.0(速報値)の地震に対し、地震検知の約4秒後の08時43分55秒に緊急地震速報(警報)を発表しました。また、09時20分のM5.6の地震に対し、地震検知の約8秒後の09時20分25秒に緊急地震速報(警報)を発表しました

地震はこうして起きた

2008年岩手・宮城内陸地震(Mj7.2)は、「餅転(もちころばし)ー細倉構造帯」北部の活断層としては記載されていない断層の深部延長の破壊によって発生した。 中新世の正断層の逆断層としての反転運動によって引き起こされたと推定される

震源域は北北東-南南西にのびる長さ45km,幅15kmの領域である(気象庁,2008).地震研究所地震予知情報センターによる発震機構解では,断層面の走向はN22Eであり,西傾斜の場合の傾斜角は49度と求められている.気象庁の一元化震源による余震分布では,本震付近の余震分布は西傾斜を示す(気象庁,2008)

https://geosociety.jp/hazard/content0031.html

震源域の地質構造概念図

2008年岩手・宮城内陸地震震源域の地質構造概念図. 本震は気象庁(2008),震源断層は気象庁(2008)の余震分布から推定.餅転-細倉構造帯(片山・梅沢,1958)の位置・活断層分布・地質情報 は,建設技術者のための東北地方の地質編集委員会編 (2006)による.カルデラの分布はSato (1994),ブーゲ異常の値は広島ほか(1990,1991).A-A’: 図3の反射断面の位置.
佐藤比呂志・加藤直子・阿部 進

震源域の地質構造の特徴
 震源域の奥羽山脈の東縁部から北上山地の間は,日本海の形成に伴う背弧リフトの東縁に相当し(Sato, 1994),西側低下の2000万年前~1500万年前に活動した正断層群が分布する.リフト形成期には火山活動を伴い,とくに奥羽山脈では背弧海盆で噴出した珪長質の火山噴出物が厚く堆積した.リフト期の正断層活動の終了後,東北日本の奥羽山脈は隆起に転じ,800万年前から200万年前には多数の珪長質カルデラが形成された.これらのカルデラは10km程度の直径を有することが多く,ピストンシリンダー型である.これらのカルデラはクラスターをなして分布し,島弧の伸びと平行に約50km間隔で形成されている(例えばSato, 1994; Yoshida, 2003).震源域の南部はとくに古いカルデラの集中的な分布で特徴づけられ,第四紀の安山岩質の成層火山である栗駒山火山を含め地熱地帯を構成している.

地質構造を特徴付けるのは,背弧海盆の形成に伴う正断層群の形成と珪長質大規模カルデラの形成に伴うドーム状の隆起,鮮新世(500万年前)以降に生じた西傾斜の正断層の逆断層としての反転運動である.2003年の宮城県北部は,西傾斜のかつての正断層の逆断層運動によって発生した(Kato et al., 2003).活断層としては震源域の北縁部で出店断層がマッピングされている(活断層研究会,1991).胆沢扇状地を東西に横切る測線では数状の西傾斜の古い正断層が明瞭にイメージングされている(Kato et al., 2006; 阿部ほか,2008).活断層として知られる出店断層は,中新世の正断層の反転運動と,反転運動に伴って正断層の高角度部分が逆断層によってショートカットされて形成された断層である.

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震源域は地質図・重力異常などから推定される地質構造と震源分布の特徴から,北北東-南南西方向に三つの地域に区分される(図1,2).遠地実体波の解析による断層面上のすべり量分布は,中部区間の浅部で最大値をとる(引間,2008).地表地震断層については,東北大学・岩手大学のグループや産業総合研究所によって報告されている.地表トレースは,概ね片山・梅沢(1958)が記載している「餅転(もちころばし)ー細倉構造帯」と一致する.これらの地表変位が観察された場所は,遠地実体波の解析結果から大きなすべりが求められた領域と良好な一致を示す(石山ほか,2008;遠田ほか,2008a, 2008b).一元化震源による余震分布は,中央部では全体として西傾斜の配列を示し,地表変位が認められた位置が震源域の東端に位置することと調和する.ただし,震源断層としては西傾斜であるものの,地表変位では西側低下の衝上断層による変位が見られる地点もあり,楔状の逆断層など浅部でのより複雑な断層形状が推定される.また,「餅転ー細倉構造帯」の東側には白亜系の花崗岩類が狭小に露出するが,大局的には中新世のハーフグラーベンのエッジ部分に相当している可能性が高い.こうした構造形態は,図3に示す胆沢扇状地を横切る反射法地震探査断面に類似し,「餅転ー細倉構造帯」も中新世の西傾斜の正断層の逆断層としての反転運動を示唆する.

図2. 2008年岩手・宮城内陸地震震源域の地質構造俯瞰図
震源域は地質図・重力異常などから推定される地質構造と震源分布の特徴から,北北東-南南西方向に三つの地域に区分される
中央部では全体として西傾斜の配列を示し,地表変位が認められた位置が震源域の東端に位置する
震源断層としては西傾斜である
「餅転ー細倉構造帯」も中新世の西傾斜の正断層の逆断層としての反転運動が示唆される

北部での震源分布は,12-10kmで緩く西に傾斜するほぼ水平な面に沿った分布を示している.この領域での制御震源探査では,地下12km程度の東に緩く傾斜するほぼ水平な反射面と出店断層のリストリックな形状を示す断層の深部延長が10km程度の深さまで検出されている(阿部ほか,2008).また,出店断層の東側にも北上山地に至る間に,2条の中新世の正断層がありこれらの深部延長は地下12km程度で緩い西傾斜をなすと推定されている(Kato et al., 2006).こうした制御震源による探査結果と地質構造の解釈結果とを比較すると,今回の地震によって出店断層とその東側のリストリックな形状の深部の低角部分のみが動いた可能性が高い(図3).しかしながら,出店断層もしくはより東側に位置する断層の高角部分(ランプ)まで破壊した証拠はない.

図3. 震源域北部を横切る反射法地震探査断面と余震分布.阿部ほか(2008)の断面に加筆. 震源分布:気象庁一元化処理震源 2008/6/14 08:40 - 24:00,投影測線直交方向±10km範囲について表示.反射法地震探査断面は阿部ほか(2008)による.

震源断層の走向方向には地震発生深度の下限は,南ほど浅い.とくに震源域の南部には,栗駒山の火山をはじめとして,とくに鮮新世から更新世前期に活動した珪長質の大規模カルデラが分布し,高温領域を形成している.これらの領域の上部地殻は,高温領域の浅化に伴って地震発生層も薄化している.さらに直径10km程度のカルデラの存在によって,地殻上部はカルデラ周辺の壁の部分のみで強度を支えるような状態になっている.このため余震分布でも一様な面で破断した痕跡は示さない.おそらく,カルデラ間の地殻上部を破断するような横ずれ断層など,複雑な震源断層分布を示すものと推定される.

今回の地震は,地質断層として記載されていた「餅転ー細倉構造帯」(片山・梅沢,1958)の深部延長の逆断層運動によって発生した.この断層は活断層として認識されていなかった.地質断層から見て地表トレースとして長さ10~15kmに渡って追跡される可能性が高い.東北日本は逆断層型の断層変位を示すため平均変位速度の大きな断層は,丘陵と平野などの地形境界を区分する断層となる.今回の断層は丘陵地形の中に形成されていてる。東北日本に分布する断層の鮮新世以降の総変位量は,日本海沿岸の断層の変位量に比べ,北上低地帯の周辺の総変位量は5~7分の1程度である(佐藤,1989). 

震度分布図

図1. 本震による各地の震度 https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/14a/kaisetsu200806141030.pdf
図2. 震源の地図 
2008年6月14日8時43分ごろ,岩手県内陸南部を震源とするM7.2 (気象庁暫定値) の地震が発生しました。 この地震により,岩手県奥州市と宮城県栗原市で震度6強,宮城県大崎市で震度6弱を観測したほか, 北海道から関東・中部地方にかけて震度5強から震度1を観測しました。 気象庁による震源の深さは約8km(暫定値)です。 また,防災科研F-netにより推定された発震機構は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型です(メカニズム解情報は こちら)。 余震域は北北東-南南西方向に広がり,一部は宮城県側にも及んでいます。 余震域の北側には,北上低地西縁断層帯の出店断層が位置しています。 東北地方脊梁部では浅い地震活動が活発です。 今回の震源域の約30km南東では,宮城県北部地震(1900年M7.0,1962年M6.5)が発生しているほか, さらにその30km南方では2003年7月に宮城県北部の地震(M6.2)が発生しており, これらの地震活動は連続的に分布しています。 また,今回の地震の20km 南西では,1996年にM6.1の地震が発生しています (過去の地震活動はこちら)。 なお,本震発生の40分前から,本震の震源域付近でM1.4を最大とする微小地震が数個発生していました。 現在の地震活動状況はこちらをご覧下さい。 
防災科学技術研究所による
https://www.hinet.bosai.go.jp/topics/iwate-miyagi080614/
図3. 主な地震の震央分布図
2008年6月14日以降に,岩手・宮城内陸域で発生した主な地震の震央分布です。 地震の諸元は,防災科研Hi-netの暫定再検測結果に基づいています。 本震(2008/6/14 8:43:45発生)以降では,同日の9:20に宮城・秋田県境付近で発生したM5.5の地震が最大です(7/3現在)。 余震活動は,全体的に岩手県側で活発ですが,栗駒山や焼石岳などの山岳部を避けるように余震の震央が分布しているように見えます。 このことは,この地域の地殻内の地震活動は,地熱構造や活構造の分布と関連する可能性があることを意味します。防災科学技術研究所によるhttps://www.hinet.bosai.go.jp/topics/iwate-miyagi080614/

地震を起こした断層

1976年の航空写真からの推測です

図1:1976年撮影の航空写真の判読結果(予察図) (赤線:活断層の可能性の高い。黒線:活断層の可能性のある。★:今回の地震時に撓みや傾動等の地変が生じた地点)
名古屋大学大学院環境学研究科地震火山・防災研究センター


https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/14a/kaisetsu200806141030.pdf
横軸は時間、縦軸は左がマグニチュード
縦棒のついた丸は地震発生時刻とマグニチュー ドの大きさを表す
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/14a/kaisetsu200806141030.pdf
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/14c/kaisetsu200806141230.pdf
横軸は時間、縦軸は左がマグニチュード、右が地震の積算回数。折れ線は地震の回数を 足し上げたものであり、縦棒のついた丸は地震発生時刻とマグニチュードの大きさを表す
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/14c/kaisetsu200806141230.pdf


※ ●は初動が上向きの観測点、○は初動が下向きの観測点を示す。 Pは圧力軸、Tは張力軸の方向を示す。(下半球等積投影)
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/14a/kaisetsu200806141030.pdf
※ ●は初動が上向きの観測点、○は初動が下向きの観測点を示す。 Pは圧力軸、Tは張力軸の方向を示す。(下半球等積投影)
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/26a/kaisetsu200806261030.pdf
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/14a/kaisetsu200806141030.pdf
周辺の過去の発震機構分布
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/14d/kaisetsu200806141630.pdf
平成 20 年(2008 年)岩手・宮城内陸地震 発震機構
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/26a/kaisetsu200806261030.pdf


「平成 20 年(2008 年)岩手・宮城内陸地震」の遠地実体波による震源過程解析


「平成 20 年(2008 年)岩手・宮城内陸地震」について,米国地震学連合(IRIS)のデータ管理 センター(DMC)より広帯域地震波形記録を取得し,遠地実体波を利用した震源過程解析(※1) を行った.断層面には気象庁のP波初動解の西傾斜の節面を用い,破壊開始点は気象庁一元化震 源の位置とした.
断層面上のすべりの領域は,震源より浅い場所に広がっており,また,すべり 量の大きな領域は破壊開始点の南側に存在することが推定できる.
(※1)解析に使用したプログラム
M. Kikuchi and H. Kanamori, Note on Teleseismic Body-Wave Inversion Program, http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/ETAL/KIKUCHI/

「平成 20 年(2008 年)岩手・宮城内陸地震」の遠地実体波による震源過程解析
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/14a/kaisetsu200806141030.pdf
推計震度分布図
2008 年6月 14 日 08 時 43 分頃の岩手県内陸南部の地震 (M7.0 深さ 10km:速報値)
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/14a/kaisetsu200806141030.pdf
※IRIS-DMC より取得した広帯域地震波形記録を使用
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/26a/kaisetsu200806261030.pdf
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/26a/kaisetsu200806261030.pdf
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/26a/kaisetsu200806261030.pdf
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/26a/kaisetsu200806261030.pdf
平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震で観測した加速度値(震度6弱以上の地点)
注1:*は地方公共団体または独立行政法人防災科学技術研究所の震度観測点を示す。
注2:震度6弱以上の観測値を示す。 注3:gal=cm/s/s
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/14d/kaisetsu200806141630.pdf
「平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震」の余震回数
https://www.jma.go.jp/jma/press/0807/10a/kaisetsu200807101030.pdf
https://www.jma.go.jp/jma/press/0807/10a/kaisetsu200807101030.pdf

余震

余震は、「平成7年(1995 年)兵庫県南部地震」(M7.3)よりも高い活動度で推移してい ますが、しだいに少なくなってきています。 震度4~5弱となるような余震の発生する可能性は低くなってきていますが、2週間程 度は注意が必要です

○断層面について
1)余震分布等からみた解析 ・余震の発生状況からみた断層は、全体的に西傾斜(西側が下がっている)の逆断層(西 側が東側に乗り上げる)と推定されます。
・このうち、本震の直上及び南側の上部の領域が大きくすべった領域(主破壊領域)と推 定されます。
・本震の震源付近(中部の領域)及び南部の領域には、西傾斜に交わる東傾斜の余震の並 びが見られ、東傾斜の断層面が同時に存在していたと推定されます。
・余震域の北部では 16 日ころにかけて、余震域の北へ少し外れた浅い場所で余震が発生。
2)気象研究所の合成開口レーダー(SAR)解析
気象庁気象研究所が陸域観測技術衛星「だいち」が観測した合成開口レーダー(PALSAR) のデータを解析しました。余震分布の全体的な傾斜方向(西傾斜の逆断層)と矛盾しない 解析結果になりました

平成 20 年(2008 年)岩手・宮城内陸地震の余震活動の状況
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/26a/kaisetsu200806261030.pdf
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/26a/kaisetsu200806261030.pdf
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/26a/kaisetsu200806261030.pdf
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/26a/kaisetsu200806261030.pdf
北部領域の活動状況
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/26a/kaisetsu200806261030.pdf
・基図は1/20万地質図幅「新庄及び酒田」「一関」. ・震央位置は防災科学技術研究所Hi-netで公開されている気象庁一元化処理震源要素 震源リスト(期間:2008/6/14 08:43-23:59)による
https://unit.aist.go.jp/ievg/report/jishin/iwate_miyagi/old/point.html


https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/20a/kaisetsu200806201030_3.pdf
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/20a/kaisetsu200806201030_3.pdf
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/20a/kaisetsu200806201030_3.pdf
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/20a/kaisetsu200806201030_3.pdf
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/20a/kaisetsu200806201030_3.pdf
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/20a/kaisetsu200806201030_3.pdf
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/20a/kaisetsu200806201030_3.pdf
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/20a/kaisetsu200806201030_3.pdf
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/20a/kaisetsu200806201030_3.pdf

他の地震に比べて上下動成分が大きめの傾向が見られる

https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/20a/kaisetsu200806201030_3.pdf


内陸及び沿岸で発生した主な地震の 余震回数比較(マグニチュード4.0)以上
※本震を含む。 ※この資料は速報値であり、後日の調査で変更することがあります
https://www.jma.go.jp/jma/press/0806/26a/kaisetsu200806261030.pdf


表中の - は、10%未満を示します マグニチュード5: 震度4~5弱になると予想されます* * 地盤の悪いところではこれよりも震度が大きくなることがあります
https://www.jma.go.jp/jma/press/0807/10a/kaisetsu200807101030.pdf

総産研による2008年岩手・宮城内陸地震速報

リンク
以下は書き出しです

2008年6月26日までの地表変状調査の結果概要

https://unit.aist.go.jp/ievg/report/jishin/iwate_miyagi/080630map.jpg
国見山南東方(地点11)で認められた地表変状
金田平太郎・粟田泰夫・丸山 正08/7/10



震度6強および震度6弱 の地域に見られた被害の写真
リンク のpdf でご覧ください。道路の損壊などが見られます

岩手県奥州市衣川区(震度6強)
震度6弱 被害の写真をいくつかピックアップした
荒砥沢ダム上流の大規模地すべり.幅900m長さ1300m最大深さ150m以上,推定移動土砂量7000万m3におよぶ10). (6月18日撮影) 
布原啓史,吉田武義,山田亮一
https://geosociety.jp/hazard/content0035.html

今回の地震で荒砥沢ダム上流部に発生した大規模地すべり(写真上)は,栗駒山南麓カルデラのカルデラリム近傍に位置している.また中小規模の斜面変動も,同カルデラの内部に多数発生している.
今回の地震に伴って発生した大規模地すべりは,相互の空間的関連からみる限り,震源近傍(上盤側)に位置していたカルデラの存在が重要な要因であった可能性が高い.脊梁山地に分布するカルデラ内部にはそれを充填する大規模火砕流堆積物の上に後カルデラ期の湖成堆積物が載ると共に,それを後火山活動期の火砕岩や溶岩が緩傾斜で広く覆っている場合が多い.多くのカルデラで,キャップロックを成す後火山活動期の火山岩類が,固結度が低い湖成堆積物の層理面に沿う塑性流動によって生じたすべり面で,大規模な地すべりを起こしている.また,第四紀火山の下に伏在するカルデラの,特に熱水変質が進んだ壁に沿って,多数の地すべり地形が分布する例もある.
荒砥沢ダム上流に発生した大規模地すべりでは,末端部に砂泥互層(湖成堆積物)が分布し,主滑落崖では,厚さ50m以上の塊状軽石凝灰岩の上位に,厚さ60mのデイサイト質溶結凝灰岩が覆っているのが認められる.今回の大規模地すべり発生箇所の地質も,固結度が弱く密度の低い凝灰質湖成堆積物の上位に,硬質で比較的高密度の火山岩類が分布するキャップロック構造を有している.

タイトル:Relationship between earthquake disasters and caldera structures using
タイトル:Relationship between earthquake disasters and caldera structures using


緊急現地調査速報(第1報:2008.6.15)

2008年岩手・宮城内陸地震の余震域北東部の地表地震断層調査を実施しました.県道49号線にほぼ並行する20万分の1地質図記載の地質断層沿いの数地点にて水田や道路等を食い違わせる地表地震断層と思われる変状を確認しました.
旧衣川村餅転(もちころばし)では水田,真打川河床,道路を横切る500m以上連続する南北~東西に湾曲する走向で北西もしくは北上がりの変状を確認しました.上下変位は45cm程度で,東西走向部では右横ずれも伴っています.
真打川左岸の南北走向部上下変位河床横断部真打川右岸東西走向部
一関市はの(木へんに爪)木立では,水田,道路を横切る300m以上連続する北東走向で南東上がりの変状を確認しました.上下変位は最大45cm程度でした.ここでは家屋内にも変状が及んでいました.(西向き撮影東向き撮影

栗駒ダム北方(宮城県栗駒郡栗駒町沼ヶ森)では北東走向北西上がりの変状を確認しました.この変状は地滑りによる可能性も否定できず,今後, 連続性を含めて詳しく調査する予定です.(写真
北上低地西縁断層帯出店断層沿いには変状は確認できませんでした.
遠田晋次・丸山 正・吉見雅行

https://unit.aist.go.jp/ievg/report/jishin/iwate_miyagi/old/080615/index.html


緊急現地調査速報(第2報:2008.6.17)

余震域周辺に分布する活断層および地質断層沿いを中心に調査を行った結果, 1/20万分地質図幅「新庄及び酒田」で図示されている地質断層沿いの数地点で地震断層の可能性の高い地表変状が断続的に分布していることが確認されました.一方,北上低地西縁断層帯出店(でだな)断層沿いでは,地表変状は認められません.リンク

緊急現地調査速報(第3報:2008.6.19)

緊急現地調査速報(第4報:2008.6.19)
 
荒砥沢ダム北方の尾根周辺にて岩手宮城内陸地震に伴う地表変状として最大の変位量約7mを確認した.その詳細を以下に報告する.
1.地表変状の確認位置および崖の概要
 荒砥沢ダム北方の市道(馬場-駒ノ湯線)が走る東西走向の尾根に地表地震断層と考えられる低崖が約800 mに亘って認められる.低崖の大局的な走向は東北東-西南西で,西端は荒砥沢ダム北方の巨大地すべり地,東端は三迫川を埋める大崩壊地に達している.
 市道より東側に分布する変状は,北向き斜面の北側が隆起し,断層崖が斜面上方を向くいわゆる「逆向き低崖」を示す.この地震断層沿いには山道およびガリーが明瞭に右横ずれ,斜めずれに変位を被っており,その最大右横ずれ量は約7m,北側隆起量は約2-3mである.この地震断層は,三迫川崩壊地より西約100mにて2条に分岐する.特に,北東-南西走向の断層トレースは北西側隆起の逆断層変位が卓越する.
 市道より西側では,主に3条のトレースが認められる.1条目は東北東-西南西走向の北落ち右横ずれの低崖で,横ずれ断層に伴う典型的なプレッシャーリッジ,モールトラックが見られる.全体として,西側尾根の南向き斜面を左ステップしながら直線的に横切る.2条目は市道のすぐ西側より東西~北西-南東走向で斜面上方へと直線的に連続する引張性のトレースで,分岐後しばらくは北東-南西方向の開口(開口量:数十cm程度),斜面上方ではさらに北東落ち(上下変位量:1-2 m)の変位を示す.3本目は市道横断地点より約100m西付近から分岐する南北走向,西側隆起(逆向き低崖)の圧縮性の低崖である.この低崖は,分岐部では広域的な高まりであるが,次第に明瞭になる.分岐部より約70m南方で鞍部と斜交し,ここ以降は東側尾根の南西向き斜面を西側隆起の逆向き低崖として地すべりの崩壊地まで直線状に続く.樹木がめりこみ東西短縮が明らかで,上下変位は概算で約3 mないしそれ以上である.
 これらは重力で滑り落ちる通常のランドスライドでは説明できず,大局的には北西側の相対的隆起と東西短縮に伴うテクトニックな変状である可能性が高い.

2008年7月9日 遠田晋次・吉見雅行・丸山 正
図1 荒砥沢ダム北方の変状のトレースと周囲での変状(東西短縮)確認位置および斜面崩壊.
図2 荒砥沢ダム北方における変状説明図

市道から西方約200m地点,最も顕著な崖(図2の上部中央および右下の写真位置)では,断層面に平行な複数の面が確認できる(図3).また,今回の変状が現れた区間では,地形に累積を示唆する高まりが認められる.

図3 最も顕著な崖で確認された断層面に平行な複数の面

荒砥沢ダム北部で,ずれ量3m以上の地表地震断層を確認
今回の地震で発生した荒砥沢ダム上流の大規模地すべりの東方で地震断層とみられる崖が約1kmにわたって認められます(トレース図参照).町営高平牧野の北を東西に走るアスファルト舗装道路に右横ずれが認められ,その東方では東北東-西南西~東西走向で北側上がりの崖が連続し,林道のずれなどから上下成分に加えて右ずれ成分を伴っていると判断されます.上下,右ずれ量はそれぞれ最大3~4mと推定されます.道路の西方では南流する荒砥沢支流の東岸でほぼ南北走向で西側上がりの崖として認定されます.今回認定された崖の東西両端では大規模な地すべりが発生しており,両者の関係が注目されます.

トレース図
空撮画像

緊急現地調査速報(第5報:2008.6.20)

奥州市衣川区餅転(地点1)において,二カ所で見つかっていた道路舗装面やガードレールの折れ曲がりから水平短縮量を測定したところ,それぞれ約40cmの短縮が生じていることが分かりました

奥州市餅転地点での地震時の目撃証言 08/6/20
奥州市衣川区餅転(もちころばし)地区(地点1)にお住まいの藤原金悦さんから,自宅前の餅転橋付近の地震時の状況について,以下のような証言をいただきました.
「最初の揺れが来て,すぐ外に出た.すると,激しい揺れが来て,近くの地面(自宅の敷地内)に地割れができた.柱にしがみついて,目が橋の方に行った瞬間に,一気に(路面が)盛り上がった.そのあとも,かなり長い間ゆれていた.」
この証言から,P波のあとS波が来て,その直後に地表の変形が生じたことがわかります.

金田平太郎・粟田泰夫・安藤亮輔
水平短縮を測定したのは以下の黄色四角で示した2箇所.橙色で示した餅転橋の北側(A)ではアスファルト舗装面の折れ曲がりを用い,水田に現れた断層が道路を横切る箇所(B)ではガードレールの折れ曲がりから短縮量を測定しました(地図上の道路位置は航空写真からずれていることに注意).(第3報の図に加筆)
写真1:A地点の舗装面の折れ曲がりの様子
写真2:B地点のガードレールの折れ曲がりの様子.
写真3:証言をいただいた藤原氏のお宅から,100mほど南に離れた餅転橋を望む. 緑色の欄干の手前に道路舗装の折れ曲がりがはっきりと見られます.

緊急現地調査速報(第6報:2008.6.23)

岩井川支流の本寺川上流の中川付近では,水田や林道に地震断層によって生成された崖や水田面の上下変動が認められました.

 本寺川の南俣では,6月22日昼頃の観察時点で,林道から水田にかけて北北東-南南西に延びる崖が認められ,西側上がり20-30cmと水平短縮10cm程度の変位が計測できました.また,これより西側でも水田面が南南東に傾動して50cm程度の上下変位を受けるとともに,一部では背斜状の変形も認められました.さらに背斜状の変形を受けた水田の西方の露頭では,地層面に沿った低角の逆断層がずれ動いて,川沿いの崖に10cm程度のオーバーハングが形成されていました.

中川地区(地点2.5):一関市
写真1-3:露頭のずれ動いた断層
岡山地区(地点3):一関市

磐井川の南北両岸で地震断層や,その動きに伴う地表・構造物の変状が認められました.

 南岸では本寺小中学校西方のアスファルト舗装道路に西側上がりの段差(第2報を参照)に伴って,東西短縮20cm程度の短縮が確認できました.さらに南南西方でも,民家の北西側で埋設水道管が破損し,牛舎の北側の地面に西上がりの亀裂があらわれ,水田面が東南東に傾斜していました.

 また,磐井川の北岸では,国道342号線に西側上がりで上下変位20-30cm程度の緩やかな崖ができており,その北側では,駐車場の縁石や建築物,集会場東側の側溝の東西圧縮によると推定される破損が見られました.一連の地震断層に沿って,河岸段丘上に西側上がりの崖が発達しており,過去の断層活動を示している可能性があります.

写真2-1: 南岸の道路上に出現した地震断層.道路は地震前から存在した河岸段丘上の崖を横切っている.
はの(木へんに爪)木立地区(地点4):一関市

第2報で報告されていた南東上がりの崖と概ね並行して,数10~100mほど南東側の水田では,北西側上がりの緩やかな傾動が認められます.地震に伴って生じたこれらの崖と傾動の間には,地震以前からリッジ状の地形的な高まりが存在しており,これは過去の断層活動を示している可能性があります.

 なお,本地点の北西上がりの傾動は,東洋大学社会学部の渡辺満久教授らの調査結果の報道に基づいて,現地で確認しました

写真3:北西上がりの傾動を示す水田面.背後の崖は地震前から存在した地形的高まり.

 近くの住民の証言によりますと,一連の断層や傾動・褶曲による変形は地震の本震直後には小さかったものの,その後,次第に成長しているとのことです.
本寺川の北俣の林道でも,西側上がり20-30cmの崖が生じているのが認められました

今回の地震発生の背景

東北地方のカルデラ分布と自然災害ハザード

脊梁山地には12Ma以降に形成されたカルデラが南北に配列している.とりわけ,栗駒火山周辺には,カルデラが密集してカルデラクラスタを構成している(第2図).今回の地震断層は,マントルから下部地殻にかけて,低速度体が発達し,地震発生層が薄い脊梁火山列分布域の海溝側肩部(火山フロント)に沿っている.この地帯は脊梁山地のカルデラクラスタ分布域と重なっている.伏在カルデラを第四紀火山が覆う今回の地震災害域と同様の地質的環境は,東北地方の多くの地域で認められる.

第2図.東北地方のカルデラと地質断層,第四紀火山の分布状況.地質断層,第四紀火山,および活断層分布は東北地方デジタル地質図 (東北建設協会,2006.) を使用

これらの主に後期中新世から鮮新世にかけて形成されたカルデラについては,栗駒地域同様,第四紀火山噴出物に広く覆われ,その構造の詳細が不明な場合が多い.今後,これらのカルデラについて,その地質構造と地すべり分布の関係に関する情報をさらに整理し,今後の防災・減災に生かすことが望まれる.

布原啓史,吉田武義,山田亮一



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