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小林製薬の紅麹コレステヘルプ服用後の腎障害、4月9日時点で

こんにちは。今週末に桜が見頃の地域は多いです。楽しい時間をお過ごしください

事件の経緯はこちら
プベルル酸についてはこちら

ところで、日本腎臓学会が紅麹コレステヘルプ服用に伴う腎障害についてのアンケート調査を実施しています。中間報告として、3月31日19:00時点までに集まった47例についてこの記事で説明します。
4月9日の日本腎臓学会と厚労省の合同記者会見の内容を追記しました

腎臓病学会会員の方のアンケート入力はこちら。4月30日まで

腎障害を起こした人数 (4月4日までに回答したもの)

これは「紅麹コレステヘルプ服用に伴う腎障害」について日本腎臓学会員を対象にアンケート調査した結果です。

「ナイシヘルプ+コレステロール」および「ナットウキナーゼさらさら粒GOLD」 は別にアンケートが実施される予定らしいです

注目点1. は厚生労働省が4月4日に発表した数よりもはるかに少ないことです。
厚生労働省発表 4月4日:小林製薬の紅麹(こうじ)原料を含む機能性表示食品により、4月2日時点で入院177人、3日時点で医療機関を受診した人は1058人、厚労省が3月29日に設置したコールセンターへの相談件数は開始から6日間で2800件程度。ソースは日本経済新聞

図1A
図1B. 4月9日 日本腎臓病学会と厚生省の合同記者会見より


腎障害を起こした人の特徴

約40%の人は2023年3月前から服用し続けていますが、腎障害で病院を受診したのは約80%の人は2024年1月以降である。
また、最初の患者として病院を受診したのは2023年11月以降である。
注目点2. サプリが腎障害の原因である、と仮定するとして仮説を立てて、主なものを書き出しました
(仮説1) 1年以上サプリを服用して蓄積毒として腎障害を起こした人が 40%、残りの60%は1年未満の服用で同様の腎障害を起こした高度感受性である
(仮説2) サプリによる腎障害は数か月以内に発症する。同じ名前のサプリだが2023年に腎障害を起こすように変化した。(私は今のところこちらの仮説)

*は、3月31日19:00までの集計結果
**は、4月4日までの集計結果

症状

3月31日19:00までの集計結果

4月9日追加 (4月4日までのアンケート結果についての記者会見から)
大半の患者にファンコニ症候群の症状が見られた(さらに確認された)
吉田啓院長(ひらくクリニック)は喉が渇く、口が渇くと訴える患者もいた。

検査データ


尿細管性アシドーシス、低リン血症,および低カリウム血症、尿糖陽性、血清クレアチニン上昇、eGFR低下は、後天性ファンコニ症候群 であることを示す。

後天性ファンコニ症候群では近位尿細管が障害されます。糸球体で血液から尿のもとが産生されます。これは原尿と呼ばれ、排泄される尿よりも多くの糖、カリウム、リン、尿酸、糖、アミノ酸、HCO3-などを含んでいて、近位尿細管で再吸収されます。後天性ファンコニ症候群では近位尿細管の障害によりこれらの再吸収が障害されています

治療方法

47例の治療方法はステロイド治療を行ったのが1/4、被疑剤の中止のみが3/4程度、透析療法を必要としたのは2症例のみです。透析を必要とした2症例のうち、1症例はIgA腎症を主体とする別の病態であり、言い換えると紅麹原料を含む機能性表示食品の単独による病態ではないため下のグラフから除きました。またグラフに含まれる透析症例は症状が改善し、透析から離脱しました。

4月9日追加 (4月4日までのアンケート結果についての記者会見から)
4月4日までのアンケート集計で症例は95例に拡大したが、患者の4分の3ほどはサプリ服用中止で症状が改善傾向となった。腎機能低下が認められた場合でもサプリ服用中止で症状が改善傾向となった。(さらに確認された)

また、低カリウム血症に対するカリウム補充や代謝性アシドーシスに対する重曹投与など電解質異常に対する補正をされている症例が多くみられます。
腎機能低下は、ステロイド治療なしでも被疑剤の中止だけである程度改善する傾向にありますが、尿所見、電解質異常は約3/4の症例で改善しているが、改善に乏しい症例もある。
注意点3. 被疑剤の中止だけである程度改善する症例は、紅麹原料を含む機能性表示食品の単独による病態であると考えられる可能性が高い。もちろん医科学的判断はまだできません。さらにステロイドを必要とする症例、腎機能低下・尿所見・電解質異常の改善しない症例群が被疑剤単独により発症したファンコニ症候群と診断できるのでしょうか、他の病態が重なっている可能性は如何でしょう
注意点4. このアンケートでは、小林製薬に届出のあった亡くなられた5人が含まれていません。本当に紅麹原料を含む機能性表示食品によって死亡されたのか慎重な解明が必要のようです

3月31日19:00までの集計結果
4月9日 日本腎臓病学会と厚生省の合同記者会見より


腎生検

腎生検は2023年12月から2024年3月にかけ、34症例に実施されている。
組織診断が最終報告に至っていない症例があるので、結果待ちになりますが、明らかになっている主な病変は、尿細管間質性腎炎、尿細管壊死、急性尿細管障害です

アンケートの回答にあったが別の病態と考えられる症例が1例含まれていた:この1例は光学顕微鏡検査で、糸球体に病変を認め、診断名はメサンギウム増殖性糸球体腎炎でした。
この症例の主治医からコメントは、以前より血尿を呈しており、今回Fanconi症候群の徴候を示すとともに、腎生検にて尿細管炎を認めたことから、「潜在性にIgA腎症のある方が尿細管炎を併発した可能性が高い」

死亡例について

死亡例5人:
年齢:70代3人、90代1人、不明1人
性別:男性2人、女性3人
基礎疾患:5人のうち少なくとも3人は、前立腺がん、悪性リンパ腫、高血圧とリウマチなど。

抗がん剤とモナコリン Kを併用すると横紋筋融解症をきたしやすくなります

抗がん剤との組み合わせで急性腎不全をきたした症例報告があります。この場合は、今回のアンケートに現れているファンコニ症候群ではなく横紋筋融解症から急性腎不全の流れです。これはモナコリン K (ロバスタチン) の3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-コエンザイム A (HMG-CoA) レダクターゼ阻害作用が抗がん剤併用によって増幅されるためと考えられています
抗前立腺がん薬アビラテロンを 14 か月間服用していた76才男性が紅麹米由来サプリメント (小林製薬製品ではない)を3か月併用して横紋筋融解症からの急性腎不全を発症した。Rhabdomyolysis-induced acute kidney injury after administration of a red yeast rice. DOI: 10.12998/wjcc.v11.i23.5547

紅麹コレステヘルプによる腎障害のアンケートから、混入している物質の毒性が透けて見えます。併存する腎障害が明確にされる可能性に期待します
注:このセンテンスを強調して拡散しないでください。

結語

小林製薬の紅麹原料を含む機能性表示食品にプベルル酸を産生する青カビまたは青カビ産物が混入し、青カビ産物の毒性によりファンコニ症候群を発症したという仮説は成り立つ可能性があります。しかし触発されて報告される腎障害の全症例(4月3日までに医療機関受診は1058人) が小林製薬の製品が原因ではない、むしろ原因が違う症例を多数炙り出している可能性が指摘されます
またファンコニ症候群から青カビ産物の毒性と連想しやすいですが、カビの消毒薬など一般的に近位尿細管障害を起こす物質の可能性も否定して。青カビが紅麹培養に混入したのか、原材料に混入したのかの区別もまだ知らされていません。

青カビ産物の混入するロットは公開されています。詳細は前の記事をご覧ください

お願い

ところで小林製薬は紅麹を販売した味噌などの企業に自主回収の依頼をされているようですが、機能性表示食品の有害が疑われるロットと同じ紅麹を販売した先を特定できないのでしょうか?冤罪で回収した会社があるように考えます。(もしすでにご連絡済みの場合は書きすぎです、失礼いたしました。)

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紅麹原料製造の小林製薬工場、床にこぼれた材料使って加工も…「食品用で健康被害とは関係ない」 4月12日2024年読売新聞オンライン
紅麹原料を製造していたのは大阪工場(同市)。1940年の操業開始で老朽化が進み、昨年12月に閉鎖されている。同社の紅麹原料はサプリ用と食品用がある。いずれも5、6人の同じ従業員が製造を手がけ、製造工程や使う機器も同じだが、コメを発酵させる紅麹菌の株が異なる。そのため交互に機器を使い、使用後は清掃をしている。プベルル酸は昨年4~10月に製造したサプリ用の一部から検出された。製造工程では少なくとも2件のトラブルがあった。最初に判明したのは原料の前段階の材料を培養するタンクを温める温水がタンク内部に混入した事案だ。さらに、読売新聞の取材に対し、同社は昨年4月、床にこぼれた材料を使って食品向けの紅麹原料を製造していたことを明らかにした。同社によると、従業員が培養した材料を混ぜ合わせる機械の蓋を閉め忘れ、床に33キロの材料が散乱。このうち、床や機械に触れていない11キロをすくい取って使い、120キロ分の食品向け原料に加工し、5月末に取引先6社に納品したという。


「カビなどが入ったら気づくはず」紅麹問題で製造業者が指摘「培養中でも色や臭いに異変」4月4日2024年読売テレビニュース

小林製薬「紅麹」事件の波紋 崩壊した機能性表示食品の“安全神話”
抜粋:健康食品分野に詳しい(株)グローバルニュートリショングループの武田猛代表は、健康被害の防止に向けて、「日本も(EUなどで見られる)ノベルフード制度を導入し、国が関与する必要がある」と提言する。

機能性表示食品 紙氏追及に消費者庁 しんぶん赤旗 4月5日2024年
4月4日の参院農林水産委員会における日本共産党の紙智子議員の質問に対し消費者庁の依田学審議官は「食品自体にリスクがあるという前提は否めない事実だ」などと述べた。紙氏は「事業者任せ、消費者の自己責任ではあまりにも無責任だ」と批判した。

被害拡大する「紅麹サプリメント」は“薬害”の可能性も!?  機能性食品学の専門家が「真犯人説」指摘 2024年4月9日 弁護士JPニュース 要点:紅麹サプリメント紅麹サプリの機能成分の『米紅麹ポリケチド』にはモナコリンKが含まれる。モナコリンKは米国で承認されている高コレステロール血症治療薬ロバスタチンと同じ物質である。機能性が表示された「食品」として流通する商品が、実は医薬品レベルの成分に近い薬理成分を有すること自体が問題ではないか?意見は芝浦工大・越阪部奈緒美教授によります。越阪部 奈緒美 教授星薬科大学薬学部衛生薬学科卒業後、食品メーカーに入社し開発に従事。2009年4月、芝浦工業大学に入職。専門分野は機能性食品学。
主な担当科目は食品衛生学、生命科学実験。日本農芸化学会・日本栄養食糧学会・日本フードファクター学会などに所属。産学連携事業にも取り組む。問い合わせ:芝浦工業大学 男女共同参画推進室

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