髪の毛をむしる

頭髪の痛みに跳びはねて起きると
満面の笑みの 吾子が毟り取る

手に当たるものを手当たり次第に口に持っていく、赤ちゃんの習性である。
抱っこされた人の髪の毛を引っ張り、ピアスを触り、ネックレスを切ろうとする。恐怖である。

さて、息子おもちくん。
ほぼ半年ほど鎮静下で絶対安静、眠り姫ならぬ眠り王子であった彼は、自発的に動くことを知らずにいた。

退院後、長い眠りの期間分を取り戻そうというのか、体重は2ヶ月で1.3倍に増え、寝返りをし、おもちゃで遊ぶようになり、徐々に目覚めていくのを見ているようである。

そして、ついに始まった。

ある昼過ぎ、おもちくんのそばで横になりまどろんでいた時。頭皮にビリッとした痛みを感じて目が覚めた。

『え、なに？！』

ふと見ると、不思議そうに、しかし嬉しそうに、私の抜けた髪の毛を握りしめている息子の姿がある。

おもちくん、知らぬ間にそんなことまで･･･。

毛根は大切にしたいお年頃に差し迫る母である。ぴりりと痛む頭皮と息子の成長に、涙目になった。