いのちの印
きみの爪 真一文字にのこりたる
炎燃やしたる痕 そっと撫でる
子の入院中、つめきりは母の仕事である。
それはNICUにいた時から変わらず続く母の仕事であり、その日もいつもと同じように爪を切ろうと息子・おもちくんの手を取った。
ふと見ると、彼の爪の真ん中の横方向、水平に一本の白い筋が入っている。
爪には、栄養や疾患歴など、色々なものが刻まれるという。
その白い筋は、彼の爪ののび方から逆算して、ちょうどおもちくんが急変したときに新しくできた爪の部分のようである。
『おもちくん、がんばったなぁ。本当に、がんばったなぁ。』
この白い筋が見られたということは、苦しかった時期を抜けて、成長できたということ。
でも、願わくば、もうこの白い線が新しく爪に入ることのないように。
つめきりを傍に置いて、その小さな、しかし生まれたときよりも確実に大きくなった手を、ぎゅっと握った。
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