ひこうき雲と、きみと、
我が胃腑に 重石がひとつ
見あげれば 蒼穹にひとすじの ひこうき雲
息子おもちくんが生まれてから、1日たりとも気を休めていない。
いや、育児というのは、元気な子でもなかなかに気を張るものだ。
しかし、ふっと吹けば飛んでしまういのちを前に、たくさんのひとたちの祈りとともに退院してきたおもちくんを前に、
『私がヘマをすることは許されない』
『今日も無事夜を迎えた』
『今日もなんとか朝になった』
日々を家で過ごし、予定であろうが緊急であろうが入院すれば、
『今日の数値はどうだ』
『手術の傷はどうだ』
『ドレーンの廃液の色はどうだ』
『私がいない間泣いて苦しくなっていないか』
常に何かを考えている。
ああ、胃の中に、石が沈んでいるようだ。
小さい、でも重い石が、胃の中に、ずーっとある。
結構堪えるな。
付添の合間、病院のロビーでひとり、ほーっと息をつき、ふと大きな窓越しに空を見上げる。
見上げた空は、とても青く澄んでとても高く。
すーっと、ひこうき雲が流れていく。
しばらく空をぼんやりと眺めて、ふっと息を吐いて。
よし、戻ろう。
おもちくんが、私を待っている。
不安も心配も恐怖心も、すべて、私と、おもちが共にいる証。
まるごとの感情を抱きしめて、きみと歩もう。
いつか、私が年老いて、子供たちのことも自分のことも忘れ、童心にかえり、神のもとへ帰る準備を始めるときまで。
ひこうき雲を眺めながら、きみと歩もう。
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