『NANA』豊作な男たち。連載開始から23年。あなたの好みは変わった?

矢沢あい作『NANA』は連載開始から23年が過ぎた。2009年で連載はストップしているものの、未だ根強いファンが多く、続きを期待する声もある。また連載開始当時生まれた世代の人たちも手にとって読むなど多くの人に愛されている作品だ。

淳子からハチに向けてのセリフの中に「あんたの庭、最近豊作じゃん」というのがある。
ハチの周りだけではなく、『NANA』の男性登場人物はとにかくバリエーションが豊富。矢沢作品で言えば、例えば『NANA』のひとつ前の連載である『下弦の月』(矢沢作品の中で私の一番のお気に入り)では男は実質、アダムと知己ぐらいで、あとは小学生…笑

『NANA』連載当時に青春時代や恋愛適齢期を過ごし、『NANA』を愛読していた世代は、それぞれの推しがいたことでしょう。好みを友達と語り合ったりもしたかもしれませんね。

連載開始から23年。酸いも甘いも経験してきた皆さんの好みは変わったでしょうか。もしくは読み返してみると当時は理解しにくかったキャラについて理解できるようになったり、新しい魅力に気づけるようになったかもしれません。

若い頃は、自己中でかつ触れたら怪我しそうな刃のようなタクミが男っぽく見えたけど、昔は頼りなく見えていたノブの真っ直ぐさに今は惹かれるようになったという人もいるでしょう。
レンやヤスの大人っぽい部分だけを見て闇の部分が理解できなかったがゆえに昔はかっこよさだけが見えていたけど、今は「付き合うのはちょっと怖いかも」と感じるかもしれません。
「今も昔も美少年シンちゃんが最高」という人もいるでしょう。
浅野さんがハチのしょうもない質問に沈黙する意味がわかるようになったり、理由はわからなくても「たしかにこういう間を取る男の人いるかも」というように思い当たる人が浮かぶようになった人もいるのではないでしょうか。

もちろん読み返してみて思うところがあるのは男性陣に対してだけではないでしょう。
しんどい経験をしてとんがっているナナよりもハチの普通さの中にこそ強さが宿ることが理解できるようになったことでしょう。

ハチとタクミのように、「格上」の男とくっつくという古典的少女漫画の展開は、結論こそ保たれているものの、その経緯はいろいろあった末のデキ婚。
「こうだからああなってゆえにこうなる」のような単純な必然性で人生が進んでいくと信じていた若い頃。でも実際はハチとタクミがくっつくように、偶然と必然が折り重なって人生は進んでいく。妊娠自体は必然とは言えないけど、二人の軽薄さや、ふわふわしたハチを結局は理解しきれないノブが身を引いていくこと、これらは二人が結び付く事態を引き寄せる大いなる複雑性を内包する必然性なのかもしれない。

豊作な登場人物たちに加えて人生の機微まで教えてくれる『NANA』。記憶が薄れている人は再読してみると若い頃のありありとした感情を体感し、人生の大きなパーセンテージが進んだ足跡を省みる契機になるかもしれない。それほど魅力的な作品である気がします。








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