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「冬季うつ」対策

日本において1月末から2月は1年で最も寒い時期で、この時期に気分が落ち込んでやる気が出なくなる人が少なくありません。

「寒いから外に出たくない」程度なら問題ないのですが、「winter blue (冬期うつ)」と呼ばれる病態のことがあります。

いわゆる「うつ症状」として
・気分の落ちこみ
・何かをしようとしてもやる気が出ない
・いつもは楽しめることを楽しめない
・気分がイライラする
・体がだるく、倦怠感がある
と言う症状がありますが、
「冬期うつ」は一般的なうつ病とは違い、食欲向上、過眠、体重増加といった傾向があるのが特徴とされています。

その原因として注目されていくのが、気分を高め、不安を減らし、集中力を上げると言う働きをするセロトニンというホルモンです。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれていますが、セロトニンは日光を浴びることにより体内で合成されます。ですから、日照時間の短い冬は、1年で最もセロトニンの分泌量が少なくなります。

12月から2月にかけて、日照時間が全国平均の半分ほどしかない地域(青森、秋田、山形、新潟など)では、自殺率が高い傾向にあり、世界的にも東欧や北欧など、北半球の高緯度地域では自殺率が高いことで知られています。

同様に日光を浴びることで皮下で合成されるのが、ビタミンDです。ビタミンDは骨代謝に関係しており、不足すると骨粗鬆症や骨折のリスクが高まったり、こどもではくる病(骨格異常)、成人では骨軟化症を引き起こしたりしますので、ある程度日光を浴びることは、気分だけでなく骨の健康のためにも重要です。

うつ病患者は健常者と比べ血中ビタミンD濃度が低く、血中濃度が低い人達は高い人達に比べうつ病リスクが1.3倍なると言う報告もあり、セロトニンの様に体内のビタミンD量は冬から初春にかけて低いことが知られています。

セロトニンにせよビタミンDにせよ、季節性に変動するのは自然なことであり、多少の気分の揺らぎは普通ですので、過剰に心配する必要はありません。

冬季うつにビタミンD補充療法が有効との報告もありますが、ビタミンDは脂溶性ビタミンですから、サプリメントなどで大量に摂ると、過剰症のリスクが高まりますので、魚やキノコ類などの自然な食材で日頃からビタミンDを摂取したり、毎日最低15分程度の日光浴を意識することが大事ですし、ビタミンDと相互作用のあるビタミンK2を一緒に摂る様にすると、過剰症を起こしにくいとも言われています。サプリメントを使う場合には、意識してみて下さい。

朝日の照度は約1万ルクス、曇った朝でも約5000ルクスはあるとされており、冬期に不足しがちなセロトニンやビタミンDの生成を促進するのに十分な量です。実際、朝の散歩を習慣化するだけで回復することがあります。

またセロトニンの原料になるのが、必須アミノ酸のトリプトファンで、不足するとセロトニンが合成されないので、食事で摂る必要があります。
トリプトファンを多く含む食材は、牛・豚・鶏などの肉類、カツオ・マグロなどの魚類、ヨーグルト・チーズなどの乳製品、豆腐・納豆などの大豆製品です。日頃からこの様な食材を積極的に摂って陽を浴びることに加えて、冬期は体内時計が乱れやすく、時差ボケの様になって心身の不調を起こしやすいとも言われています。

「冬期うつ」は、こじらせると精神科や心療内科の専門医にかかる必要がありますが、軽ければ自力での回復も望めます。心当たりのある人は、ぜひ上記の対策を実践してみて下さいね。

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