見出し画像

【大麻関連製品は全部危険!?】


こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。

最近、「大麻グミ」報道により、大麻関連製品への警戒がかなり強くなっており、投稿当日か翌日には、問題の成分HHCHも規制対象に追加される様ですね。簡単に事件の概要やHHCHについてまとめてみました。

【大麻グミ事件の概要】

2023年11月4日(土)に東京都小金井市で開催された「武蔵野はらっぱ祭り」にて、強い精神活性作用を持つ物質「HHCH」を含むグミが配布され、それを食べた10代から50代の6人が体調不良を訴えて救急搬送されました。

【大麻とは何か】

「大麻」と「マリファナ」は同じ意味で使われることもありますが、厳密には意味が異なります。

「大麻」とは、植物である大麻草(学名Cannabis sativa)ならびにそれに由来する製品を意味します。

「マリファナ(marijuana)」とは、主に酩酊などの精神作用を引き起こす主成分であるテトラヒドロカンナビノール(tetrahydrocannabinol:THC)を一定量以上含有する大麻草の一部または製品を意味します。

大麻植物の中には、THCをほとんど含まないものもあり、アメリカの法律では、これらの植物はマリファナではなく「工業用大麻」とされています。

日本でも大麻草は、七味唐辛子などに含まれる麻の実、或いは食用油としてのヘンプオイルなどの食用のほか、麻織物などの繊維として使われ、最近では住宅用建材などの材料として使われており、栽培許可を受け合法的に栽培されている大麻も産業用です。

【大麻成分の名称の整理】

大麻植物には約540種類の化学物質が含まれているとされます。大麻植物に含まれる物質群はカンナビノイドと総称され、100種類を超えるカンナビノイドが同定されています。

主なカンナビノイドには、上述したマリファナの精神作用を起こす主成分THCと、様々な症状を改善させ医療用などとして注目されているカンナビジオール(cannabidiol: CBD)があります。

この他にも、香りや風味などの大麻草に特有の性質を与える物質はテルペンと総称され、一部に健康効果があるとして注目されています。

大麻やホップなどの類縁植物から精製単離したCBD製品が良く見られますが、CBD以外の多数の微量成分も効果に関与しているとして、THCだけを可能な限り除去しその他の成分を敢えて残存させた「ブロードスペクトラム」と呼ばれる製品もあったりします。

【米国で大麻は合法!?】

大麻天国の様なイメージのある米国ですが、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration: FDA)はいかなる医療用途にも大麻植物を承認していません。

とはいえ、CBDなど一部のカンナビノイドを含有する薬は、特定の希少な型のてんかん、がん化学療法に伴う吐き気と嘔吐、HIV/AIDSに伴う食欲不振と体重減少などの症状緩和に役立つ場合があり、FDAは医療利用を承認しています。とはいえ、大麻やカンナビノイドの医療への応用の為の研究は、まだ初期段階なので、かなり慎重に行われています。

FDAは、THCまたはCBDを含む製品はサプリメントとして「合法的に販売できない」としており、州境を越え自由に販売することはできません。州内で合法的に販売できるかどうかは、その州の法律と規制によります。

また、THCを含む電子タバコ製品を使用しない様にFDAは警告しています。THCを含むかどうかに関係なく、プロピレングリコールやグリセロールなどを用いて人工的にエアロゾル蒸気を発生させ吸い込むタイプの製品は、重篤なリポイド(脂肪性)肺炎の発生に関係していると考えられているからです。

この蒸気発生の仕組みは、燃焼を伴わない電子たばこや加熱式たばこ、或いはベイパー(vapor)と総称される水蒸気煙を発生する機器の仕組みとして一般的に使われているので、この様な機器を使われる方はリスクの理解が必要です。

リポイド肺炎は、炎症を起こしている肺組織に脂質の沈着を認めることを特徴とする肺炎で、気道閉塞病変などに伴い、コレステロールやサーファクタントなどの内因性脂質が沈着する内因性リポイド肺炎と、誤嚥や吸入した油脂性物質により生じる外因性リポイド肺炎とに分類されます。

「喘息患者さん用の吸入薬剤にも使われている成分」としてもプロピレングリコールなどは使われているのだから、と安全性を強調する人達もいますが、医療用の1日2-8吸入程度と、喫煙の代用としての使い方とは、吸入総量が全然違うので、安全性として同じ扱いはできません。

そして実は、THCを含むクッキーやキャンディーなどがホームパーティーなどで提供され、参加者の子供などが偶然摂取して体調が悪くなったり亡くなったりする事件は、以前から米国で起きていたりします。

有用としてもてはやさてるCBDも、FDAが行った精製CBD医薬品であるエピジオレックスを薬剤として承認する前のその有効性と安全性の評価研究では、下痢、眠気、肝機能異常などが見られました。とは言えこれは、サプリメントや薬品には広く見られる症状ですけどね。

【HHCHとはなんなのか】

HHCHは、違法薬物指定されているマリファナ成分であるTHCの構造に似せ、人工的に作られた新しい代用物質で、いわゆる脱法ドラッグ成分です。

メディアに出ていたHHCH製品を取り扱う会社の社長が「違法性は無い」と強調していたのも、規制にかからない様に作られていたからです。

元々THCは規制対象だったために、HHCHの前にも、構造を少し変えた強い精神活性作用を持つ合成品が作られ、次々と規制されてきました。規制されては微妙に構造の異なる脱法成分が出回る、という規制と脱法のイタチごっこの状態です。

HHC: 2022年3月に指定薬物として規制
THCP: 2022年3月に指定薬物として規制
THCO: 2023年3月に指定薬物として規制
HHCO: 2023年3月に指定薬物として規制
THCH: 2023年8月に指定薬物として規制

今回のグミ事件で話題のHHCHも、今年8月のTHCH規制をきっかけに代替成分として流通し始めました。

そのため、代表的な大麻成分であるCBDやTHCと比べて、十分な安全性の研究がされていません。公開されている医学論文データベースであるPubMedでは2023年11月時点で、CBDは累計約11,500本、THCは累計14,000本の論文が投稿されているのに対して、HHCHは累計7本しか投稿されていないことからも、確認出来ます。

このことからも、HHCHなどの合成品が人体にどのような影響を及ぼすのか不明な点が多すぎることが分かります。

【HHCHの薬理特性を推測すると】

とは言え化学的な構造を見る事で、ある程度の性質は推測できます。HHCHは、2023年8月に指定薬物として規制されたTHCHに水素(H)を付加して合成された物質で、THCHに似た強い精神活性作用があります。

マリファナに含まれるTHCの化学構造のアルキル側鎖という部分を見てみると、THCは炭素原子が5個繋がりますが、THCHやHHCHは炭素原子が6個あります。

一般的に、アルキル側鎖の長さは物質の脂溶性に関係しており、この長さが変わることで代謝速度や受容体親和性なども変わります。

そのため、THCよりもアルキル側鎖の長いTHCHやHHCHは、THCよりも強い精神活性作用や持続時間を持つ可能性が高いと考えられますので、利用者や製造販売者からするとコスパが良い、規制側からするとよりタチが悪い、成分と言う事が出来ると思います。

【知らない人から貰った物は警戒しましょう】

という事で、ザックリと大麻成分やHHCHについて書いて来ましたが、今後もこの様な事が起きるでしょう。

路上やイベント会場などで、明らかにスタッフが配布しているとか、信頼できる製品で無ければ、受け取らない、開封しない、と言う選択が良いと思います。見慣れない表記がある場合には、スマホなどで検索してみるのも良いですね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?