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Panama Limited Jug Band – Panama Limited Jug Band (1969)

 ギター兼ボーカルのイギリス人Denis Parker(なんと2018年に新作を発表している)が結成したPanama Limited Jug Bandは、バンド名をBukka Whiteのブルースから採り、音楽性はJim KweskinやStefan Grossmanからの強い影響がうかがえる。同時代のエレクトリック・サウンドなどどこ吹く風といった面持ちで、英国でもここまで本格的なジャグ・バンドができることをはっきりと定義づけた彼らは、フォーク系ブルースのオムニバスに参加するなどしてロンドンのシーンでは知られた存在だった。
 収録曲の多くは戦前から歌われていた古典を取り上げている。特に「Going To Germany」や「Overseas Stomp」などは、まさにKweskinやGrossmanのジャグ・バンドも演奏していた名曲だ。後者は「Lindberg Hop」というタイトルでも知られているが、本作ではGrossman版とはボーカルの男女が入れ替わっているのも印象深い。「Cocaine Habit」は鼓膜を圧迫するジャグと繊細なマンドリン、そしてごちゃまぜになったコーラスが織りなす重層的な迫力が圧倒的だ。この一曲だけでもこのアルバムを手に入れる価値がある。
 ジャグ・バンドの歌い手は、みなMaria Muldaurのようである必要などない。それを証明するかのように、力強いハスキー・ボイスを持つ女性ボーカルのLiz Hannsは、時にParkerをしのぐ存在感を見せている。
 彼らのセカンドはハーヴェスト・レーベルらしさのにじむ、ややプログレに傾倒した作風になった。もしもあなたがCaptain Beefheartのファンならば断然そちらをおススメする。きっと驚くはずだ。