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Jack Scott – Way To Survive (2015)

 カナダが生んだ最高のロックンロール・シンガーJack Scottが、79歳という境地で発表した『Way To Survive』は、オリジナル・アルバムとしては数十年というブランクを経た作品だ。
 彼のようなアーティストはElvis PresleyやRoy Orbisnのような大御所と比較(確かによく似ている)されるのが常で、そうした言葉は多くが称賛のつもりでもたらされるものではあったが、時にはイメージを締め付ける遠因にもなった。しかし、だからこそ名曲「Trouble」の、現代的にアップデートされた激しいギター・ソロと、Presley然としたドスが効いているボーカルのコントラストにはドキッとさせられるのだ。過去を懐かしんでしんみりとするRay Priceのラブソング「Way To Survive」に至っては、Scottのような老シンガーが歌うことによって、オリジナル曲にすら無かったペーソスさえ深読みせずにはいられない。
 Scottのもう一つの真骨頂であるカントリー・シンガーとしての才能は、「Tennessee Saturday Night」や、Hank Williamsの「Honky Tonk Blues」のようなオールディーズで顕著だ。また、クレジットこそ明らかではないが、バックのピアノやギターも非常に粋な音を聴かせてくれる。
 Scottは4年後の2019年に83歳でこの世を去った。『Way To Survive』の中には、早くに亡くなったWilliamsやPresleyたちには無い厳粛な哀愁が響いている。これはScottがいわゆる〈残された者〉だったからこそ出来たことなのだ。