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Jim Reeves – The Intimate Jim Reeves (1960)

 なにも南部出身のカントリー歌手のすべてが、いつもテンガロン・ハットをかぶって豪快な荒くれ者のようにふるまっているわけではない。テキサス州ギャロウェイ生まれのJim Reevesは、まさにアルバム『The Intimate Jim Reeves』の古臭いが上品なジャケット写真のように、柔らかな包容力を持った不世出の歌手である。彼の落ち着いたバリトン・ボイスは初期のヒット曲である「Mexican Joe」の時代からすでに発揮されていたが、本作のようなストリングスとコーラスをまとったイージー・リスニング作品でこそ、その魅力が最大限に引き出される。
 本作のプロデュースは名ギタリストであるChet Atkinsが手掛けているが、ギターのサウンドが主役を張っているような曲は決して多くない。ビルボードのカントリー&ウエスタン・チャートで3位に輝いたシングル曲「I'm Gettin' Better」や落ち着いた雰囲気の「Dark Moon」は、ギターとストリングス、女性コーラスとしなやかなヴィブラフォンのバランスが端正で、真に上質なポップスに仕上がっている。「Room Full Of Roses」のロマンチックさには思わずうっとりしてしまう。Willie Nelsonもカバーした「Have I Stayed Away Too Long」の悲しい響きも印象深い。
 Reevesのレコードには60年代前半の時点で既に大きな影響力があったが、彼の歌声は1964年の7月に永遠の伝説となってしまった。ナッシュビルに向かう途中の小型飛行機が嵐の中で墜落し、40歳の若さでReevesはこの世を去った。