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John Paul Hammond – John Hammond (1963)

 父親が伝説的な音楽プロデューサーであるJohn Hammond, Sr.であれば、その息子であるJohn Hammond, Jr.が音楽の道に進むことはなんら驚くべきことではない。実際彼が父親とはあまり接点がなかったことを差し引いても、ヴァンガード・レーベルから発表された本作は、いぶし銀とも言うべきブルースの渋み、先達の音楽への並みならぬ愛情にあふれている。
 アコースティックでの大胆なアレンジが逆に新鮮なChuck Berryの「Maybelline」を除くと、全てがブルースの定番曲である。しかしSon Houseによる「I Got A Letter This Morning」などは(「Death Letter」の題名の方がよく知られているだろう)、本作が録音された当時は当のHouseは再発見されておらず、ましてや戦前の録音でしか人々に認知されていなかったことを踏まえると、なかなかに挑戦的かつマニアックな選曲と言える。
 数年後にはブルースロックでは避けて通れないナンバーとなる「Hoochie Coochie Man」「Crossroads Blues」だが、Hammondは弾き語りの特権とも言うべき自在なリズムと呼吸でブルースを奏でている。60年代前半はPaul Butterfieldらの登場によりブルース・ロックが勃興し始める時期でもあり、Hammondも後にエレクトリック・ブルースを取り入れることとなる。さらに、アトランティック・レーベルに移籍した後はファンキー・ブルースなど、多彩な顔を見せることになるが、ファーストアルバムに詰まったこのアコースティック・サウンドこそがブルースの神髄であることを、彼は誰よりも分かっていたのだろう。