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Breakout – Blues (1971)

 60年代に黄金期を迎えたブルース・ロックのムーブメントはサイケデリックの波と同時に世界的に広まったが、それは西側世界に憧れる共産圏の若者たちも例外ではなかった。ポーランドのギタリストTadeusz Nalepaを中心として、Blackoutという前身グループから発展したBreakoutは、西側諸国とは比べ物にならないほどの強い風当たりを社会から受けながらも、同国のポピュラー音楽の発展に貢献した偉大なグループだ。
 グループの絶頂期を捉えたアルバム『Blues』は、端的な名前とは裏腹に、ロック音楽特有のクロスオーバー精神が反映された作品である。当時FreeやLed Zeppelinの登場によって起こったハードロックの潮流を捉えた「Oni Zaraz Przyjdą Tu」のギターサウンドや、作詞専門に手掛けたメンバーである詩人Bogdan Loeblによるフォークソング的な感傷に満ちたライティング。このセンスの前では〈共産圏のロック〉というレッテルは関係なく、同時期のUKブルースと比べても遜色などない。
 ブギー調の「Przyszła Do Mnie Bieda」や、7分を超える「Gdybym Był Wichrem」のセンスに満ちたDariusz Kozakiewiczのギターには、初期Fleetwood MacのブギーやCreamのインプロヴァイゼーションなど多くの影響が聴いて取れる。
 ポーランドのロック黎明期を支えたBreakoutは80年以降も断続的に活動を続けた。Nalepaはソロでも多くの作品を残し、その功績にはポーランドの名誉である復興勲章を授与されている。