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Alan Silva – Skillfullness (1969)

 フリー・ジャズ・ファンにはおなじみの、そうでない人にはいささか不気味に思えるモノクロのジャケットに包まれた『Skillfullness』は、60年代の混沌を反映した壮大な即興音楽絵巻である。ここで重要になるのは、本作のサウンドがジャズとクラシックのいずれにも分類できないことと、実はAlan Silvaがベースを弾いていないということぐらいだ。
 第一部の「Skillfullness」の中でSilvaはヴァイオリンやチェロを駆使しており、特に序盤のストリングスは女性の叫びのように聴こえるほどヒステリックで攻撃的な音をあげる。Becky FriendはPatti Watersのような声をあげながらフルートを吹きまくっているが、彼女が時おりおだやかな民謡のように美しいメロディを奏でると、ピアノもやさしいタッチでそれに呼応する。後半、ヴィブラフォンで加わるのは、当時Don Cherry作品への参加で名が知れていたKarl Bergerである。
 サウンドの密度が薄かった「Skillfullness」に対して「Solestrial」は、Silvaと同じくBYGレーベルで活躍したピアニストDave Burrellや、ドラマーLaurence Cookらが新たに参加しており、一転嵐のような轟音で幕を開ける。さらに言えばこの曲の正式なタイトルは〈Solestrial Communications Number One〉だったが、まさに楽器による喧々諤々の大議論といった様相だ。さりげなくサイケデリアの時代を感じさせるMike Ephronのオルガンも印象的だが、なんといってもラスト3分間の壮絶な盛り上がりは特筆に値する。