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James Brown – Live At The Apollo (1963)

 James Brownによるこの傑作は、もしかしたら世に出ていなかったかも知れなかった。Brownはハーレムの賑やかな空気をそのままパッケージしたレコードを作るために、R&Bの殿堂であるアポロ劇場のステージを録音しようと考えた。しかし、キング・レーベルの社長だったSyd Nathanが本作の発売に最後まで及び腰だったために、Brownは5千ドル以上におよぶ録音費用を自腹で負担することを決意せねばならなかった。
 観客の期待をあおるオープニングの後、完璧主義の下で統率されたバンドはスタジオ版よりも早いテンポで「I'll Go Crazy」を演奏する。メロディよりも激しいリズムを生み出すことにこだわったホーン・セクションは今聴いても刺激的だ。かつてZoot Moneyもファースト・アルバムでこの曲をカバーしたが、本作のバージョンが模範であろうことは誰の耳にも明らかだった。
 「Lost Someone」は長いスロー・ブルースに、「Please, Please, Please」のようなヒット曲は怒涛のメドレーにするなど、ライブらしい構成も当時は新鮮だった。特に前者では、普通なら消されるような観客の狂った叫び声がそのまま収録されており、生々しさに満ちている。
 ラジオでレコードが何度もノーカットで放送されたにも拘らず、アルバムは驚異的な売り上げを見せた。ビルボードのポップ・チャートで66週間にわたり食い込んだ本作はBrownの人気を不動のものにし、彼の後のアポロ劇場の公演は実に5度にわたってアルバム化されている。