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Frank Stallone – Frank Stallone (1984)

 1982年の映画『ランボー』でロッキー・バルボアに代わる当たり役を得たアクション・スターSylvester Stalloneは、翌年の『ステイン・アライブ』では新たに音楽映画のジャンルに挑戦した。興行はなかなかのものだったが、なんといってもこの映画の最大の成果は、彼の実弟であるシンガーのFrank Stalloneが素晴らしい劇中歌「Far From Over」でビルボード・チャートのトップ10に食い込むヒットを放ったことだった。
 かつてValentineというバンドでは上品でまとまりのあるサウンドをバックにしていたStalloneだが、本作ではシンセの音や分厚いドラム・ビートを導入した、魅力のあるハードなディスコ・ポップが展開されていく。レコードのA面とB面が、どちらもハイテンポで情熱にあふれる「Runnin'」と「Far From Over」で始まるのは、きっと偶然ではないのだろう。
 「Once More Never Again」ではファルセットも含めてもともと伸びやかな彼のボーカルが最大に発揮されている。メランコリーな「She's So Popular」ではLarry Williamsの王道的なサックスがStalloneの熱唱をひき立てており、「Darlin'」でのVince DiColaの明るいキーボード・ソロもまた印象的である。Valentine時代の仲間だったBob Tangreaも、ハード・ロック調の「I Do Believe In You」などにバック・コーラスで参加した。
 アルバムはひたすらシンプルで美しい「Fly Together」で幕を下ろす。『Frank Stallone』はバラエティと起伏の妙に富んだ作品であり、LP全体を通してじっくりと聴きこみたい一枚でもある。