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Jay Ferguson – Thunder Island (1977)

 Spiritでは骨太なサイケデリック音楽を、Jo Jo Gunneでは一本気なロックンロールをそれぞれ追求してきたJay Fergusonにとって、キャリア中でもっとも成功した『Thunder Island』はポップに開眼したヒット作だった。これは確かに事実だが、元をたどれば彼のルーツはThe Beach Boysを愛するサーフ少年であり、カリフォルニアンらしい陽気なポップ精神がソロ活動に入ってようやく現れたということもできる。
 カギとなっているのはプロデューサーのBill SzymczykとギターのJoe Walshで、それはアルバム冒頭で聴けるAORなコーラス・ワークとハードなスライド・ギターによく表れている。このタイトル・トラックはリスナーを西海岸産らしい穏やかな気風と熱気で刺激するが、「Happy Birthday Baby」や「Love Is Cold」といった、キーボードを活かしたバラードも本作の魅力だ。また、「Losing Control」のようなロックンロール・ナンバーもWalshのプレイ以外は程よくトーンが抑えられている。
 前作『All Alone In The End Zone』からの変化を挙げるとすれば、「Cozumel」や「Nightshift」で取り入れられているレゲエ、ディスコのビートがより本格的なものになっていることだ。「Babylon」はその仰々しいタイトルとレゲエ調のギターで誤解されそうだが、中身はコーラスの美しいラブ・ソングで、Jo Jo Gunneに歌われていた曲のリメイクでもある。
 多彩なグルーヴと妥協のないギターによって、タイトル・トラックだけにとどまらない魅力を湛えている一枚だ。