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Joe Callicott – Presenting The Country Blues (1969)

 1969年にこの世を去った"Mississippi" Joe Callicottにとって幸運だったのは、晩年に自身のレパートリーをレコードとして多く残せたことだった。かつてソロやGarfield Akersの伴奏として78回転盤を残していたとはいえ、戦前の音楽シーンに限って言えばCallicottというブルースマンは比較的マイナーな部類である。熱意のあるブルース収集家George Mitchellの働きかけでキャリアを復活させ、音楽フェスの出演やレコーディングを行うようになったのは、60年代に入ってからのことだった。『Presenting The Country Blues』はMike Vernonプロデュースによるシリーズものの中の一枚で、こういったリバイバル運動があったからこそ、Callicottは今もなお最後のブルースマンとしてFurry Lewisらと並び称されるようになったのだ。
 「On My Last Go Round」は典型的なデルタ・スタイルの「Rolling And Tumbling」を元にした曲で、「Traveling Mama Blues」で聴かれたあの繊細で的確なギターは健在であることが分かるだろう。「Dough Roller Blues」で伝わってくる静かな盛り上がりや、ピッキングの絶妙な間のとり方は鳥肌ものだ。
 歌声は枯れテンポもゆったりとしているが、「Hoist Your Window And Let Your Curtain Down」で披露される寂しげなファルセットには思わず心を奪われる。「War Time Blues」は特に古い時代のもので、Callicottが少年期を過ごした第一次大戦のころの愛国歌のひとつだという。特に賑やかで楽しいのは、同じスタジオに来ていたBukka WhiteとBill Barth(当日は『Memphis Hot Shots』の録音をしていた)が参加した「Joe's Troubled Blues」だ。Callicottの歌へちょっかいを出すように口笛を入れるのがWhiteで、フォーキーなアンサンブルを生み出しているのがBarthの巧みなギターである。