見出し画像

Bukka White – Memphis Hot Shots (1969)

 畏れ多くも黒人解放の士ブッカー・T・ワシントンの名をそのままつけられたブルース・マンBooker T. Washington "Bukka" Whiteは、本作と同じ年に開催されたメンフィス・カントリー・ブルース・フェスティヴァルをまさに象徴する存在だったといえる。黒人と白人の融和(KKKに抗議するために、彼らが集会を開いたのと同じ場所で開催された)を目指したこのフェスで圧倒的なパフォーマンスを見せたWhiteは、勢いそのままにメンフィスの名物スタジオ〈アージェント〉に赴いて異色の名盤『Memphis Hot Shots』を録音した。Mike Vernonがプロデュースしたレコードは英国で発売された。
 ステージではリゾネーター・ギターの弾き語りのスタイルだったが、本作では大胆にもロック畑のバンドをバックに据え、パワフルな演奏を聴かせる。「Aberdeen, Mississippi Blues」は先のフェスでも披露されたナンバーで、パーカッシブなリズムと卓越したスライドのテクニックを味わえる。伝統的なモチーフを新しく解釈し直した「(Brand New) Decoration Day」では、サイケ・バンドThe Insect TrustのメンバーBill Barthが、Whiteとは対照的に繊細なギターを弾いている。底抜けに楽しい「Old Man Tom」ではスタジオが歌詞の通り喜びに沸いていたことがしっかりと伝わってくるし、「World Boogie」ではJim Crosthwaitのウォッシュボードだけで極上のグルーヴが生まれてしまうのだから不思議だ。
 Whiteの歌と力強いプレイは様々な後進バンドに多大な影響を与えている。本作は彼のキャリアの中でも一風変わったつくりではあるが、彼と彼を尊敬するミュージシャンとが直接的な交流を繰り広げる様子を知ることができる貴重なアルバムでもある。