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Little Richard – Little Richard Is Back (1964)

 Little Richardが突然ロック・シンガーとしてのキャリアに終止符を打とうと決心したのは、スペシャルティ・レーベルからアルバム『The Fabulous Little Richard』を発表した1958年頃のことだった。その後数年間の活動はゴスペル・ミュージックに限られるようになっており、また彼の歌においても、ロックンロール時代に培った野性的なシャウトが持ち込まれることは無かった。
 ブランクを経て録音された本作は、ほとんどがオールド・ヒットで構成されている。だが不安は1曲目の「A Whole Lotta Shakin' Goin' On」冒頭におけるRichardのチャーミングな〈お説教〉で完璧に吹き飛んでしまう。彼のボーカルは今までのツケを払うようなある種の勢いに満ちており、途方もなく粗野だが包容力がある。例えば「Only You」は女声と間違えそうなほどのハイトーンと、Sam Cookeばりの甘いソウルが共存する驚きのナンバーだ。
 「A Whole Lotta~」での目の回りそうなギター・ソロをはじめ、バック・バンドの演奏も壮絶の一言だ。当時スワンプ・ロックなどという言葉はまだなかったが、「Going Home Tomorrow」は妖しいフィドルが強烈な印象を与える。RichardにかかればLeadbellyの「Goodnight Irene」も、見事なゴスペルに仕上がってしまう。
 『Little Richard Is Back』はアルバム・チャート入りを果たし、翌年のシングル「I Don't Know What You've Got But It's Got Me」もR&Bチャートの12位にまで食い込んでいる。だが大事なのは、このヴィージェイの諸作品が、Richardが依然としてロックのレジェンドであることをしっかりと示したということだ。