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Out Of Focus – Out Of Focus (1971)

 およそ掴みどころがないクラウトロックの世界で、そのジャンルを深く掘り下げ、考察しようとすることは時に不毛な行為でもある。ドイツのミュンヘン出身であるバンドOut Of Focusの場合はジャズロックと捉えてよいが、アルバム全体を包むフリーキーなサウンドは、単なるジャズにとどまらない不定形のグルーヴの塊だ。
 ただならぬジャケである。不気味な絵は彼らのアートワークの特徴だが、何かの風景にも見えるし、地図のようにも、そして人の頭にも見える。なにはともあれ、本作は彼らにとって2作目であるセルフタイトル・アルバムだ。メロディックだが最小限のサウンドという印象だった1作目『Wake Up!』と比較すると、ホーンの厚みは増え、反復的でドロついたクラウトロック特有のミニマリズムにはより拍車がかかっている。依然として即興性を基調としながらも、全体的に一貫した、構造を見据えるようなアプローチに移行している。
 Moran Neumüllerによるサックス、フルートを中心とした奇妙なジャズロックに、ぼんやりと政治的な歌詞が乗っかっていく様は、まさにドイツのアングラの面目躍如といった印象だ。しかしなによりも恐ろしいのは、70年代初期のドイツにはOut Of Focusのように、一筋縄ではいかないロックバンドがひしめいていたという点だろう。